いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「魔術監獄のマリアンヌ」松山剛(電撃文庫)

魔術監獄のマリアンヌ (電撃文庫)
魔術監獄のマリアンヌ (電撃文庫)

これは“魔術”が忌避され、呪いとされる時代の出来事――。
魔術師たちの監獄である『ヴァッセルヘルム大監獄』に着任した若き刑法官マリアンヌへ、国から衝撃の厳命が下った。それは数年前、魔術師たちの反乱を扇動して捕らえられた男ギルロアとともに、未だ逃亡を続ける反乱の首謀者レメディオスを捕縛せよというものだった。
反乱軍と王国軍の戦いで故郷と両親を失ったマリアンヌと、反乱軍の魔術師にして大犯罪者であるギルロア。水と油の二人は、口論を重ねながらも旅を続ける。
その最中、マリアンヌはかつての魔術師たちの反乱に隠された“真実”に少しずつ近づいていき――?

魔術師が虐げられる世界のダークファンタジー。少女刑法官マリアンヌ(孤児/生真面目/純粋/童顔巨乳)と、司法取引に応じた大魔術師ギルロア(戦犯/不真面目/匂いフェチ/イケメン風)が反乱の首謀者を追う。


これは良い成長譚。
魔術の腕はそこそこでも驚くほど世間知らずなマリアンヌが、ギルロアとの奇妙な旅路で、世界の真実を知っていくのが話のメイン。魔術師の置かれる実状に、王国の暗部。自分が孤児になった戦乱の真実に、ギルロアの真の目的。多く事実、厳しい現実を突きつけられその度に悩み考えながら、でも真面目な性格ゆえに歩みは止めることなく愚直に前に進もうとするマリアンヌの姿。それが目の前に困っている人がいれば放っとけない彼女の優しい性格も相まって、尊く綺麗なものに映った。
ただ、いい話ではあったけど泣けなかったなあ。
思った通りの重くシリアスなストーリーに、思っていた以上に救いのない世界観。泣きの松山の本領が発揮される舞台は整っていたのだが。メインの二人の間でちょくちょく顔を出していたラブコメの松山が涙腺刺激力を緩和してしまった感がある。シリアス一辺倒にならずに読み易くなっている面もあるけれど、個人的な好みとしてはもっと重くてよかった。