いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「この空の上で、いつまでも君を待っている」こがらし輪音(メディアワークス文庫)

この空の上で、いつまでも君を待っている (メディアワークス文庫)
この空の上で、いつまでも君を待っている (メディアワークス文庫)

“将来の夢”なんてバカらしい。現実を生きる高校生の美鈴は、ある夏の日、叶うはずのない夢を追い続ける少年と出会う。
東屋智弘。自分とは正反対に、夢へ向かって一心不乱な彼に、呆れながらも惹かれていく美鈴。しかし、生き急ぐような彼の懸命さの裏には、ある秘密があって――。
「死んででも見たい何かって、あるんじゃないかと思うんだ」
少年が守り抜いた約束と、奇跡の結末に触れたとき、再びページをめくりたくなる。
夏の日を鮮やかに駆け抜けた、一つの命の物語。

第24回電撃文庫大賞《大賞》受賞作



人生はつまらないと何事も斜に構えた見方しかしない少女・市塚美鈴と、まるで小学生の様な夢を語る少年・東屋。雑木林に投棄されたガラクタからロケットを作っている東屋を、市塚が見つけたことから始まる青春小説。
前半は、何事にもケチをつけ馬鹿にしないと気が済まない美鈴の様子に、こういう時期あるあると共感できる反面、無駄に攻撃的な彼女の様子は読んでいて気持ちのいいものではなく、雑木林に出向く理由も東屋につっかかる理由がなくて彼女が何をしたいのか分からないというのもあり、読み進めるのがしんどかった。
それが、市塚が東屋の事情を知ったところから一変する。
市塚美鈴、一皮剥けたら頭に超が付くぐらいの熱血野郎だった。彼女の友達を含めて、女の子でも「野郎」の方が相応しい情熱と男らしさを発揮してくれる。いや、化けすぎだろう。河原で拳で会話して友情を深めるヤンキーか、君らはw
そこからはひたすら「青春」の一言。言葉使いから思い切りの良さから男気溢れる美鈴に、ノリのいい気持ちのいいクラスメイト達。東屋の夢が一つの形になる瞬間はただただ感動する。
「夢」とは何かをとてもエネルギッシュに、時に暑苦しく語る熱い作品だった。今年の電撃小説大賞は「若者へのエール」がテーマなのかな?
ただ、このエピローグはどうなんだろう。賛否ありそう。夢を持てた美鈴のその後に嬉しくなる反面、無理矢理ハッピーエンドにしなくても思う自分は、どちらかと言えば否の方。