いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ウォーター&ビスケットのテーマ2 夕陽が笑顔にみせただけ」河野裕、河端ジュン一(角川スニーカー文庫)

ウォーター&ビスケットのテーマ2 夕陽が笑顔にみせただけ (角川スニーカー文庫)
ウォーター&ビスケットのテーマ2 夕陽が笑顔にみせただけ (角川スニーカー文庫)

8月をループする街【架見崎】。プレイヤーが命がけのゲームをするこの地で、最大手チームの2つ【平穏な国】と【PORT】が、ついに交戦する――そう予見した香屋歩とトーマは、戦いを「引き分け」に持ち込むため、もうひとつの大手チーム【架見崎駅南改札前】へ向かう。そこには最強のプレイヤー【月生】ただひとりが所属していて――「そんな風に我儘に、貴方はなにを目指すのですか?」「安全な世界ですよ。僕でも安心できるほどの」
架見崎全土を巻き込む戦いの裏側で、臆病な少年による、世界のルールを打ち破るための革命が、静かに進行する。

異能ありサバイバルの陣取り合戦が行われている、8月をループする街【架見崎】。そこに放り込まれた臆病な少年・香屋が、久しぶりに再会した親友・トーマと共闘する第二弾。



悪い意味というか悪感情では全然ないのだが「気持ち悪い」が一番しっくりくる形容詞。全能感、違和感、異物感。全部ひっくるめられる言葉が他に見つからない。もちろん、香屋のことである。
2大チームが周囲のいくつかを巻き込んでの交戦で、狭い架見崎の大部分が戦闘状態に入った今回。にも関わらず、戦場に一度も立たなかった香屋。1巻はそれでも戦場にはいて囮役までやっていたのに、それすらなくなった事で、香屋だけ同じ舞台で違うルールの別ゲームをしている印象が強まった。具体的には、みんなはFPSをしているのに、一段上の視点でチェスしている感じ。しかも対戦相手は盤の向かい側ではなく、その後ろにいる誰か。さらに、トーマという考え方が近しい相棒の登場で、その特異性が際立っている。これは作中で怪物だの神様だの言われるわけだ。
気持ち悪いと思うところがもう一点。
「死は最低で最悪」だと言い誰も死なせたくないという願いと、多を助ける為に少の犠牲は割り切ることが出来る実行力。この二つが同居しているのが気持ち悪い。目指すところは似ていても、感情の方向性は真逆だと思うのだが。
結局、2巻になって香屋のゴールがなんとなく見えてきたが、まだまだ計り知れない、というよりますます謎が深くなった。気持ち悪いを連呼したが、読書で最も楽しい「どうなるの?」を一人で作り出せる彼は間違いなく魅力的なキャラクターだ。
謎といえば、世界の謎の方も深まっていた。架見崎の秘密の上に集められた人々の出所の秘密が加わって、こちらの考察も面白くなりそう。
2巻も面白かった。展開はほぼほぼ主人公の掌の上なのに、状況と世界の謎は混沌としていくのが不思議な感覚。
香屋争奪戦が始まりそうなフラグがいくつか立っていたが、、、なんて予想を立てると、全く違うことが始まるんだろうな。