いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「笑う書店員の多忙な日々」石黒敦久(メディアワークス文庫)

笑う書店員の多忙な日々 (メディアワークス文庫)
笑う書店員の多忙な日々 (メディアワークス文庫)

東京の小さな書店で、個性的な店員に囲まれながら働く楠奈津。文庫文芸担当の彼女は、新人バイトの紗和とともに膨大な仕事に埋もれていた。
ある日、某出版社から持ち込まれた新人デビュー作のゲラを読んだ奈津は衝撃を受け、全店フェアを提案する。だが、「なぜ新人の作品を?」「情熱だけで売れるわけないだろ」と周囲から猛反発を受ける。
「私が売りたいと思ったんですよ。売れてほしいと思った。それじゃいけないんですか!」
果たして、奈津の想いは報われるのだろうか――?

快活でノリのいい何かとエンターテイナーな書店員たちが働く大型書店を舞台にした物語。
あれ? 中型店舗を自称しておられる? 売り場が4階まであって中型書店は流石に無理があるのでは? 店員も客もやけにバイオレンスアクロバティックなことを加味すると、これの舞台は日本じゃないかもしれん。まあ、フィクションが現実に即さなければならない理由は一つもないけれど。
内容の方もなかなかにアクロバティック。
万引き犯へのハイテクかつ痛快な対処といい、実績はもちろん賞もない新人作の取り扱いといい、書店員さんが自分が働く書店がこうであったらいいな、という願望を書き連ねたような作品。そんな作品内でも、出版不況という現実は変えられないというのが世知辛いね。
スカッと出来る面もあるので純粋にエンタメ小説として読めば楽しめるかもしれないが、苦楽に共感したりその職種ならではのあるあるネタを楽しむことを主とするお仕事小説として読むとイマイチに思うかもしれない。……はい、私はそのつもりで読んでしまって「ないわー」という感想に至りました。
やっぱりお仕事小説にはある程度のリアリティが欲しいなあ。それがないなら、初めから舞台を現代日本じゃないどこかにしておいてほしい。