いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「逆転ホームランの数式 転落の元エリートと弱小野球部が起こす奇跡」つるみ犬丸(メディアワークス文庫)

逆転ホームランの数式 転落の元エリートと弱小野球部が起こす奇跡 (メディアワークス文庫)
逆転ホームランの数式 転落の元エリートと弱小野球部が起こす奇跡 (メディアワークス文庫)

いつも初戦敗退の秋上高校野球部を救うためにやってきたのは、家庭を失った人生崖っぷちの元エリート社員・八雲だった――。
野球経験はからっきしの監督は、不安顔の選手たちを前にこう語る。
「俺データを使って、この野球部に革命を起こす」
革命の第一歩……それは、選手のリストラだった!?
データを武器に野球素人監督が弱小高校球児たちと起こす逆転ホームラン、その感動の奇跡が開幕する!

最後まで読んで色々ビックリした。
まずは作者に別名義があった事。シリーズ十巻以上の野球小説!?……G先生にお伺い中……『戦国ベースボール』これか! 集英社みらい文庫(小学生向け小説)か、知らないわけだ。
あとは参考文献の量。野球理論書で2ページ埋まってる。これはガチですね、先生。作中の登場人物名から察するに虎党かな? 「藤波はコントロールが良い」発言には苦笑しかなかった。ちなみに藤波くんは本作品の舞台となる高校のエースで、某球団の同じ読みの選手とは一切関係はございません。
……って、作品の内容に触れてない(^^;


エリートサラリーマンの主人公がコンサル業で培った統計学の知識を元に、セイバーメトリクス高校野球に取り入れて弱小校をのし上げていく物語。と書くと格好良いが、問題はその動機。それは仕事人間で妻と子に逃げられた主人公が、球児の息子に認められること。そんなわけでこれは「誇れる父」を取り戻すべく奮闘する、残念なおっさんの成長譚。
この主人公、元エリートサラリーマンとは思えないほど言動が軽薄で詐欺師っぽく第一印象は最悪だが、そこから、エリート時代の自分を捨て、指導を通じて高校生たちと触れ合い、似た考え方の強豪校の監督を反面教師にして次第に人間味を獲得していく様子に、不覚にもグッと来てしまう。
ただ、期待していた野球要素はちょっと薄味。
専門的になりすぎてしまうと一部の野球ファンにしか受け入れられない内容になってしまうのは理解できるのだが、その一部の野球ファンからすると、ここまで専門用語をどんどん出してくるのなら、もっと突っ込んだ内容にしてもよかったんじゃないかと思う。どっちつかずになった感は否めない。
強豪は倒したものの練習試合なので彼らの本番の様子を読んでみたいが、続きはあるだろうか。