いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「学校の屋上から君とあの歌を贈ろう」道草よもぎ(メディアワークス文庫)

学校の屋上から君とあの歌を贈ろう (メディアワークス文庫)
学校の屋上から君とあの歌を贈ろう (メディアワークス文庫)

新生活を前に期待で胸を膨らませる春の季節。中学の頃は仲間と共にバンドに明け暮れていた恭一だが、ある出来事をきっかけに大好きだった音楽を捨て、人と関わることを辞め、鬱々とした日々を送っていた。そんな彼の前に、ギターを背負った少女・ちとせが現れた。
「あんたの暗い過去なんて、わたしがぶっ飛ばしてやる」
ちとせと出会い、彼女の真っ直ぐな想いに鬱ぎ込んでいた恭一の心は動き出し――。
軽音部復活と文化祭ライブのため集まった最高の仲間、青く突っ走る彼らの姿に胸打たれる爽快青春小説!


王道にして至高の青春劇。大好きだ!
幼いころから一人でギターを続けてきた少女が、仲間と文化祭でライブをするという夢を叶えるため、廃部になった軽音部を復活させて仲間を集めてと、目標に向かって奔走する部活×音楽の青春ストーリーとしてはオーソドックスな話。オーソドックスゆえにキャラクターが引き立つ。
メンバーは、問題児1号発起人のちとせ(Gt,Vo)、問題児2号ドレッドヘアの恭一(Dr)、恭一の幼馴染み萌子(Ba,Vo)、生徒会長候補の伊吹(Ker)の四名。個性がバラバラでそれぞれにキャラが立っていることもさることながら、一人一人にちゃんとドラマがあり、それにリンクする音楽に対する情熱がある。おかげで胸が熱くなるポイントがいくつもあった。
一押しは萌子。女の子とは思えない笑い方といい、恭一との男友達のような悪友感といい、それに似合わない面倒見の良さといい、最後に恭一が言うように「いつもいい女」だった。
そして何より良いのが、その四人が一緒に音楽をすることが楽しくて仕方がないのが伝わってくること。お馬鹿なちとせと恭一だけでなく、真面目な萌子や伊吹も一緒になって、小さな夢のために無茶して馬鹿をする。それが堪らなく良い。青春を堪能させてもらいました。
最高でした。自分の中では今年の五指に入るのは間違いない。



しかし……実在でも創作でも、かつてこんな酷いあだ名で呼び合うバンドがあっただろうか。ここまでくると“仇”名の漢字を当てるのが正しいのでは? という苦笑を禁じ得ない彼らの呼び名が気になる方は買って読んでね(ダイマ