フリースクール〈静鈴荘〉で教師として働きはじめた佐伯道成は、一人の生徒を追い詰める深刻なトラブル――謂れのない罪の告発と嫌がらせに直面する。大人の悪意から子どもを守ろうと必死に奔走する佐伯だったが、先輩教師の舞原杏が選択した救済のカタチはあまりにも意外なものだった。一方、心を閉ざしていた〈静鈴荘〉の住人・三好詠葉にも変化が訪れ、残酷すぎる恋物語が動き出す!
フリースクールを舞台にした人の心の傷について考える物語、衝撃のラストから続くシリーズ第二弾。
戦後最大の未解決事件といいつつ犯人があっさり判明して驚いたが、本題はそこではないってことか。今回は犯人本人の口から語られるバスジャック事件の動機と、静鈴荘に住むひー君こと幹久の傷とそれにまつわる騒動、この二つが話の軸。
で、その騒動がきつい。
事件の被害者と加害者の家族、要するに罪を犯してない人たちが苦しむ、遣る瀬無さと行き場のない憤りを覚える話で、読むのが辛いものになっている。でも、その中に散りばめられたいくつもの伏線と、苦しむ人たちを目の当たりにしたバスジャック犯が心情が興味深くて、読む手が止まることはなかった。
登場人物たちが抱えるものやバスジャック事件との関係など、考える材料は沢山出てきているのにも関わらず、この先どうなるかがまるで読めないのが面白い。
詠葉の行く末は? 佐伯の決断は? もう仮面夫婦にしか見えない杏と詩季の関係は? 綾崎ワールドの問題児なあの人も出てくる第三幕が楽しみ。
あとは考察というか自分用の整理(ネタバレ)
・杏には夫の詩季ではない婚約者がいた。
→瑠伽の証言から確実。
・死別か失踪かは不明だが、婚約者の不在が杏の心の傷なのも間違いない。
・詩季の負目も恐らくここ。
・バスに乗り合わせていたという瑠伽の弟が長身の大学生?
→瑠伽と詩季の年齢差7歳を考えると可能性大。
・その大学生が杏の婚約者?
→いとこだが可能性は大いにある。舞原家にもいるし。
・婚約者がバスジャック事件後にマスコミに追い詰められた?
→なくはないが、だとすると杏の佐伯に対する当たりが柔らかすぎやしないか?
・詩季の小説が婚約者を追い詰めた?
→詩季の負目には説明がつくが、佐伯に対する柔らかさには説明がつかない。
・別の事件で杏・婚約者・詩季が関わった?
→現状では不明。