いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「このぬくもりを君と呼ぶんだ」悠木りん(ガガガ文庫)

偽物の空、白々しい人工太陽。全てがフェイクの地下都市、リアルな『何か』を探している少女レニーが出会ったのは、サボリ魔で不良少女のトーカ。レニーは彼女から特別な『何か』を感じ、一緒の時間を過ごすようになる。ある日、レニーの前に空から赤く燃える小さな球体が。 それを『太陽の欠片』と名付けたレニーは正体を調べる。一方でトーカにも変化が……。ずっと続くと思っていた二人の日常は音を立てて崩れ始め―― 。第14回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞。ガールミーツガールから動き出す、青春SFストーリー!


およそ二百年後の未来、地上に住めなくなった人類は地下に都市を作り生活していた。空、太陽、雨、食べ物……すべてが作りものの街で暮らす少女たちの青春模様。優等生である自分に疑問を持ちリアルを求めるレニーと、移民街出身ゆえに周りに馴染めず味方のいないトーカ。共通点はないのになぜか惹かれあった二人の友情の物語。

上辺を取り繕ってばかりで、本当の自分はどこにあるのだろう?
多くの人が一度は感じたことのある悩みを、SFの世界観「作りものの地下都市」にリンクさせて強調し、思春期を鮮烈に綴った青春小説。レニーとトーカの双方の視点から語られる物語で、全く違う性格ながら二人とも同じように悩み苦しみ間違う、十代の少女らしい高い感受性と潔癖さが感じられる。特に自傷行為にまで及ぶレニーの感情は強烈で、トーカとのすれ違いやで外野の横槍で心の支えを失い壊れていくレニーにはハラハラさせられっぱなし。
ただ、始まって早々に友情にひびが入り始めるので、二人の絆がどれだけ強いのかをもう少し丁寧にやってくれれば、後半がもっと盛り上がったのに、とは思う。
それでも、思春期らしい葛藤、若さゆえの過ち、友情が救う心、どれも素晴らしく青春を堪能した。


ガガガの謳い文句が「百合×SF」になっているけど、これを百合とするのはどうかな? 百合漫画家がイラストを手掛けているだけで、純粋な友情の物語だと思うけど。SF要素もあくまで心情を際立たせる道具でSFを書いているわけではないし。売り出し方が作品の趣旨とズレている気がしてならない。