いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ビブリア古書堂の事件手帖II ~扉子と空白の時~」三上延(メディアワークス文庫)

ビブリア古書堂に舞い込んだ新たな相談事。それは、この世に存在していないはずの本―横溝正史の幻の作品が何者かに盗まれたという奇妙なものだった。どこか様子がおかしい女店主と訪れたのは、元華族に連なる旧家の邸宅。老いた女主の死をきっかけに忽然と消えた古書。その謎に迫るうち、半世紀以上絡み合う一家の因縁が浮かび上がる。深まる疑念と迷宮入りする事件。ほどけなかった糸は、長い時を超え、やがて事の真相を紡ぎ始める―。


新シリーズ始動でIIが付いたビブリア古書堂の事件手帖の新刊。再始動、素直に嬉しいです。
大輔が『マイブック』に綴った、栞子と大輔が関わった事件の顛末を、二人の娘の扉子が読む形で話が進む。今後もこの形式? いや、前の短編集や今回のエピローグを読む限りでは扉子の事件もありそうな予感なので今回だけかな。
そんな新シリーズのスタートのテーマは「横溝正史」。
少しでも読んだことのある作家が出て来ると、自分の中の食いつきや理解度が違って一層楽しく読める気がするこのシリーズだけど、今回は本当に読んでいてよかった。起こる事件が横溝作品になぞらえた作りになっているところが多く、その不穏な空気やおどろおどろしさに金田一シリーズの空気を感じさせてくれる。
それでいてシリアス一辺倒ではなく、ところどころで篠川親子が中和してくれるので、楽しく軽めに読めるのも良いところ。
新婚さんが可愛いのは分かるけど、三十路栞子さんも変わらず可愛いのがズルい。この人、お婆ちゃんになっても可愛いんだろうなあ。
それに引き替えその母親は……。孫を悪い道に引きずり込もうとする悪人にしか見えない。あなたが一番ホラーだ。
怖い人に目を付けられてしまった扉子が心配だが、一先ずはまたビブリア古書堂の物語を読める幸せを噛みしめようと思う。