いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「三角の距離は限りないゼロ6」岬鷺宮(電撃文庫)

一人の中にいる二人の少女、「秋玻」と「春珂」。そのどちらも選ばないまま過ごした甘い時間の終わりに、僕と彼女と彼女の、本当の恋が始まった。
再び短くなっていく、入れ替わりの時間。二人といられるかけがえのない時間が、二重人格が、終わる――そんな予感に包まれるなか企画したクラス会で、秋玻と春珂はみんなに、自分たちの秘密を明かした。
「それでも、覚えていてほしいんだ」
忘れない。いま僕の前にいる、どちらも間違いなく本物の、秋玻と春珂。でも僕のために、そして二人のために……僕は選択する。そして僕が二人の向こうに透かし見た「彼女」は――。
僕と彼女と彼女が紡ぐ、切なく愛しい、三角関係恋物語


三月。高二の終わりが近づくと共に秋玻と春珂の入れ替わりの時間がさらに短くなり、“三人”の関係に終わりが見え始める第6巻。
青春ラブストーリーに抱く感想じゃないけれど、凄く平和だ。
現代が舞台のラブストーリーのはずなのに、シリアスなサスペンスやハードなバトルものより追い詰められる主人公がいた所為で、ここ数巻は恋愛関係ではないハラハラと息の詰まる空気が標準装備だった。それが今回は一転して穏やかな時間が流れていた。これで、矢野くんは落ち着いた環境で秋玻と春珂のことを考えられる……と思ったんだが、
矢野くんさあ、友達を信頼して自分たちの状態と心の内を話すところまでは理解できるけど、どちらが好きかを他人に聞くのはどうなの? それはもう心を開いて話す事とは別問題だろう。特殊な条件だし心情としても選び難いのは解るけれど、それは自分で答えを出さないといけないことだし、いくら参考程度でも他人の意見で変わるような答えは秋玻と春珂にも失礼だと思うのだけど。しかも、友人たちも普通に答えてるし。自分ならそんなこと聞かれたら引く。
この作品、雰囲気は好きだし二人のヒロインの性格は好ましいのだけど、矢野くんの思考だけはいつまで経ってもわからん。
ちなみにヒロインの方は、可愛くなる宣言した秋玻も隙あらばアピールする春珂も可愛かったのだけど、残念ながら前半だけ。後半は検査での不在で影が薄くなってしまった。
今回は嵐の前の静けさ、クライマックスに向けての準備のような巻だった。残された時間はあとわずか。三角を作る二点はくっ付いてしまうのか無くなってしまうのか。矢野の決断は? 結末が予想できなくて続きが楽しみ。