たとえ戦場であろうとも、彼らの青春は確かにそこに在った――。
絶死の戦場で、行き着いた安息の中で、再び舞い戻った戦場で、初めて足を踏み入れた雪の王国で。戦友と、兄弟と、恋人と、家族と。共にテーブルを囲み。盃を酌み交わし。時には、互いの誕生日を祝いながら。
戦うことのみが日常と定められたシンやレーナたちに訪れる、平和なひととき。どうか明日も、こんな穏やかな時間が彼らに訪れますように。そう願わずにはいられない、ささやかな幸せを詰め込んだ、もう一つの『86』がここに。
店舗特典SSやフェア限定SS、電撃文庫MAGAZINEなどに掲載された短編。さらには著者・安里アサト書き下ろし短編も多数収録!
店舗特典やフェア掌編を集めた掌編集。たまに短編くらいの長さのものもあるが、基本は4,5ページ程度の掌編がメイン。
戦闘・作戦の合間、少年少女たちの“日常”が収められた掌編集。戦場での冷静さと、ある種の諦めと達観で、頼もしくも悲しくなる大人びたエイティシックスたちが、まだティーンエイジャーなんだということを再認識させてくれる、そんな一冊。本編は悲壮感が増してラブコメやっている場合じゃないので、これでラブコメ成分を補給しようという戦略かな……たぶん。
やっぱりというか「ですよねーw」っていうか、くっつきそうでくっつかないシンとレーナのもどかしい恋模様がメインコンテンツ。いつ死ぬか分からない戦場なんだから気持ちくらい早く通じ合ってよという焦りと、戦場だから結ばれたらそれはそれでフラグのようで怖いなというジレンマが、甘酸っぱさと共に押し寄せる。
それと同時に感じるのが意外なシンのポンコツ具合。レーナは本編でも年頃の女の子なところを見せてくれているが、かの死神も平時はこんなにも隙だらけだとは。あと、ラノベ主人公力というかラッキースケベ力が高いなと。
そんな風に甘々ゆるゆるな話を並べながら、時折戦場らしい遣る瀬無い切ない話を挿んでくるのがズルい。余計にしんみりしちゃうじゃない。
最後の書き下ろし短編は、、、一言「カオス」
登場人物のおさらいと、主要キャラの誕生日が知れたのは良かったかな。香水はよーわからんです。本編では実現不可能な最後の一コマやりたかっただけだろ感は少しある。個人的にはファイドの萌えキャラ力が一番の読みどころだと思ってる。
久々に可愛いレーナとシンを読めて満足。本編でこれをやれるのは、その後短編集とかになりそうだなあ。