いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「レプリカだって、恋をする。4」榛名丼(電撃文庫)

レプリカだって、恋をする。4 (電撃文庫)

さようなら、“私”。彼のもとへと走っていく、春。
「ナオが決めて、いいんだよ。ナオとして生きていくか。それとも……私の中に戻ってくるか」
素直に与えられた猶予は、一か月とすこし。オリジナルのために働く〈レプリカ〉である私の心は、もう決まっていて。
そして、やって来たクリスマスの日。観覧車の中で、私はアキくんにお別れを告げた。
なんにも後悔はない、そのはずだったんだけど――。冬はいつの間にか終わり、春がもういちど、私のもとに訪れる。
レプリカと、オリジナル。二人がひとつの答えに辿り着く、第4巻。


浜名湖パルパルは夏のイメージしかないなあ。あの陽気なCMの所為かな。

地元民しかわからないネタはともかく、
本編ナオの物語、最終章。素直の元に戻るか、個として生きるか。ナオに厳しい選択が迫られる。
悩んで悩んで答えを出して、それでも間違えて……思春期の少女の心の葛藤を描く青春小説として、とても切なく澄んだ美しい物語だった。
一般的に正しい答えと個人の欲求の間で揺れ動き、自分の中の優しさとエゴのせめぎ合いに悩み苦しむ。優しい気持ちが素になった〈レプリカ〉だからこそ生まれる苦しみに、無理なのはわかっていながらもっと我がままでいいのに思ってしまうのと同時に、元の素直という少女の優しさも垣間見えて二重で切なくなる。
そうして迎えたラストは、こう来るか……そうか……
決してバッドエンドが好きなわけではないし、運命に抗って力強く生きていくのも青春小説としては間違いのない答えだとは思うのだけど、〈レプリカ〉という存在の性質上、最後は儚く消えていくのが最も美しく映える結末だと思ってしまった。そう思う私はきっとヒトデナシ。
心優しい少年少女が大いに悩む青春ストーリーで、最近のラノベでは珍しく文章に独自の空気感を持った良作だった。
予告されているサイドストーリー・素直の章に期待。