いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「転生王女と天才令嬢の魔法革命 王宮秘話」鴉ぴえろ(富士見ファンタジア文庫)

転生王女と天才令嬢の魔法革命 王宮秘話 (ファンタジア文庫)

「私、メイドになる!」
アニスがユフィのメイドになることを宣言!? 困惑していたユフィだったが次第に乗り気になり――
そんな二人の平和な日常を始め、書き下ろしを含めた7つのエピソードを収録したシリーズ初の短編集が登場!
まだ出会ったばかりのアニスとユフィの一日、イリアの過去と向き合うレイニ、母シルフィーヌと親子の対話をするアニス、ティルティが胸に秘める葛藤……など、これまでの魔法革命の裏で皆が紡いできた大切な物語が今ここに語られる――
――そして、後で祈るのだ。
この幸せで温かな時間がこれからも続きますように、と。


シリーズ初の短編集。
ドラマガ掲載の短編がメインだからもっとコメディタッチで百合ん百合んしてくれるのかと思ったら、テイストは基本本編と変わらない。割と真面目なシリアス路線。
作者が性格的に生真面目で、はっちゃけるのがあんまり得意じゃないんだろうな。短編だからって空気感を変えすぎてもイメージが崩れることもあるし、作家さんによって短編長編、コメディシリアスの得意不得意があるので一概には言えないけれど。これがこのシリーズの色、ということで。
そんな真面目なこのシリーズ、短編でもちゃんとテーマが設けられている(たぶん)。この一冊のテーマは「親子愛」。全7話中2,3,5話の3話がその話。
親の愛情は子に伝わらず、子が本当に欲しいもの欲しい言葉は親に伝わらず。親子間での愛情は表現するのも受け取るのも難しいもの。大きなしがらみのない現代社会でも難しい親子の問題を、恐らく庶民よりずっと希薄で利害関係が大いに関わる貴族社会で、より顕著にして表している。家族愛な6話「ハルフィスの結婚」も広い意味で同じテーマかも。不幸な子供を生み出さないでね、という意味で。そこは転生者のアニスに現代準拠の福利厚生を頑張ってもらわないとw
お気に入りは2話「子と母と」
アニス母子の話で、母シルフィーヌの不器用さと優しさに思わず顔が綻ぶ。ツンデレ系で可愛いお母さまである。あの母上から見てもユフィ父の第一印象はイヤミな奴なのねw
あとは一番コメディしていた4話「愛への報復」
何をどう頑張ってもネコとタチはひっくり返らないよって話ですね、わかります。性格と性癖はどうしようもないね。ネコ同盟を組もうとしてレイニにあえなく袖にされている王姉殿下には同情を禁じ得ないw レイニは現状に満足してるのね。ドSとドMで相性よさそうだもんな←
そんなわけで、期待していたほどの百合成分はなかったけれどこの作品らしい短編集でとても良かった。