いつも月夜に本と酒

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「新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 XI」支倉凍砂(電撃文庫)

新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙XI (電撃文庫)

蝕の予言を巡り争ったルウィック同盟を説き伏せ、見事に天文学者アマレットの奪還を成し遂げたコルとミューリ。
しかしそれは、デュラン選帝侯の威信をかけた計画が白紙に戻ることを意味していた。苦難の中、アマレットがもたらした一縷の希望――かつて古代帝国軍の北への行軍を阻んだとされる月を狩る熊が月を落とした地の伝承だった。
もし教皇庁まで通ずる新道の開削が為せば、侯の権威と命脈を保ち、教皇庁の喉元に刃を突きつけることとなる。
ゴブレアとバーリンドの選帝侯も加わり、南北に分断する要衝の調査に乗り出したコルとミューリ。だが、二人の前に月を狩る熊の伝承者が立ちふさがる――!


公会議に向け味方を増やす旅の続き。周囲を山に囲まれる天然要塞のウーバンから、かつて在ったとされる南への道を再び通すべく月を狩る熊伝承の地へ赴くコルたち。
結局、探すところからなのかい。前回あんなんで説得されたデュラン選帝侯の切羽詰まり具合は予想以上だったということか。ただの愚物で小物なだけの可能性もあるけど。
それはともかく、
森の探索から始まり、隠れ里の発見、噂を嗅ぎつけた二人の選帝侯の登場、何やら大物そうな異端審問官まで現れて、冒険あり政治あり逃亡劇からの大捕り物ありと、目まぐるしく局面が変わるコル大忙しの回。
そんな慌ただしい中で、ミューリやヴァダン(鼠)や不良王子の助言や手助けがありながら、生きるのに必死な里の民に対しても、老獪な選帝侯や異端審問官に対しても、落ち着いて対処していたコルの様子が印象的。特に異端審問官にして梟の化身・ローシェとの対決は見物だった。
ミューリと一緒に相手の狙いと弱点を看破して、自分を囮にしてまで決めた強烈な一手での逆転劇が痛快。しかも、これまで清廉さや誠実さを武器に地道に仲間を増やしてきたコルの人望が逆転の決め手になるのが、過去の経験と強者ゆえに孤独なローシェとの対比になっていて、信じて進んできた道が間違っていなかった証明になっているのも良い。
ただ、ミューリさん。友達いないを連呼するのは可哀想だからやめていただきませんかね。私を含む一部の読者に刺さるからw
今回は話が二転三転し全体像を掴むのに苦労したが、かつての仲間の名前がいくつも出てきて、また主人公がこれまでの実績と成長で相手を手管を上回る展開が熱くて面白かった。それと同時に〇〇の化身大集合状態で終わりの気配も。やっぱり公会議が最終決戦でゴールなんだろうか?