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「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア16」大森藤ノ(GA文庫)

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア16 (GA文庫)

それは悪夢。「『遠征』失敗、派閥連合は壊滅!」
それは破滅。「まさか『氷園』に墜ちるとは……」
それは痛哭。「行く。もう一度、あの地獄に」
そして、それは逆襲。「……貴方の力が要る」
その『怒り』の名は『希望』。白光の大火、妖精の咆哮。 破滅を打ち砕く不屈の意志。 奇跡は未踏の先で待つ。
絶望のただ中でその名を呼べ。 これはもうひとつの眷族の物語、 ――【剣姫の神聖譚】――


オラリオの総力を挙げて臨むロキ・ファミリア救出作戦。本編21巻をロキ・ファミリアの視点で語る外伝16巻。ダンジョンに取り残された内の本編では出てこなかったメンバーの安否が明らかに。
最早『ダンまち』のもう一人の主人公と言っても過言ではないレフィーヤ。彼女の視点がメインの物語を想像していたが、実際はフィンたちダンジョンに残されたメンバーの視点が半分、レフィーヤとラウルの救出隊に参加したメンバーの視点が半分といったところ。なので、全編全力疾走だった本編21巻に比べるとじっと耐え忍ぶ時間が長く、動の本編・静の外伝といった印象。
一章は「千蒼の氷園」に捕らわれたフィンたちの様子が主で、そのあまりに過酷な環境はスタートから「壮絶」や「凄惨」という言葉がぴったり。ここまで潜るのをわかっていながら、こんなにヤバい場所の情報を秘匿していた豚ギルマスは出荷で。
一方、救出隊の方ではラウルの“死相”で嫌な予感がビンビンに、本編で分かっていたとはいえレフィーヤはボロボロに。そんな死屍累々の中、ボス戦に突入していく。
ボスラッシュだった本編違って、こちらは強いボス戦一戦のみ。しかし、一体のみのボスが、しかも現状最強の冒険者三名がいるボス戦が優しい訳がなく、本編ではベルが無敵状態だった所為で控えめだった絶望感がこちらで十二分に味わえる。わーい(吐血)
いやいや、いくら何でも強くしすぎでしょう、このボス。バッドコンディションとはいえ、Lv.7が簡単にボロ雑巾になるのはやりすぎだ。しかも嗜虐性が強くてやり口も嫌らしいという凶悪さ。ハラハラというよりは「もうやめてくれよ」という悲壮感の方が強かった気がする。
でも、そんな強大なボスだったからこそ、ラウル一世一代の特攻もレフィーヤのラストアタックも映えたという側面も。ラストアタックはここまで外伝を追ってきた人へのご褒美のような涙腺にガツンと来る美しいエピソードだった。
予定を変更してソード・オラトリアも続くようで。あとがきに「剣姫の神聖譚だから」とあるので、このところ姫訳が多いアイズの物語が語られるのかな?