スープ屋「しずく」常連の伊予は、忙しくも充実した日々を過ごしていた。けれど、ある出来事をきっかけに異変が起こる。伊予は休職し、祖母が住んでいた鎌倉で養生することを決める。近所に来るキッチンカーのシェフや客と親しくなるうち、伊予のもとに事件が舞い込んでくる。さらに祖母の家から出てきた「幻のワイン」には秘密が……。「しずく」シェフの名推理が冴えわたる!
スープ屋しずくの謎解き朝ごはんシリーズ第10弾。今回は理恵の友人で元同僚、しずくの常連の長谷川伊予が主人公。
部署替えもあって仕事に忙殺される日々の中で聞いた祖母の訃報。色々なストレスが重なりパニック発作を起こしてしまった伊予は、休職して祖母の家の整理をしながら静養することに。鎌倉の暮らしで親しくなった人たちとのやり取りの中で起きた不思議を、伊予がしずくに持ち込み店主の麻野が解いていく。
理恵の視点ではなかったからか、それとも後半の二話が大きな事件を扱ったからか、いつもと少し趣が違う。
前二話の話のメインは伊予のパニック障害の症状。発作が起こる状況や伊予の不安感が詳しくリアルに描かれていて、明日は我が身になる可能性は十分にある話として、勉強になるし身につまされる。ただその分、日常の謎は影が薄い。
後ろ二話は新聞一面級の大きな事件にが扱われていてハラハラ感が強く、こちらも日常感がない。それでも食が関わる不思議を科学の視点で解いていく過程はこのシリーズらしい。
そんな中、スープの魅力だけは一切損なわれていなかった。
文章だけでホッとする空気と食欲を刺激をする描写が出来るのが凄い。特に最近は一期に寒くなってきたので、飲んで温まりたくなるスープばかり。しかも今回は療養中の伊予の下に実に罪なものが。それはしずくのスープの冷凍パック詰め合わせ。羨ましい!ズルい!
それともう一つ気になるのが、麻野と理恵の関係の進展なのだけど、、、
麻野と理恵の絡みやあの後の様子が分かったりすることはほとんどなかった。残念。理恵と娘の露の仲の良さは伊予の視点からでもよく見えてニッコリ。
スープの質と量がいつも通り素晴らしかったことと、ちゃんと続いてくれたことだけで満足。
