勉強会をして。海に行って。古い友人の待つ田舎へ帰省して。夏休みも終わりに差し掛かったある日のこと、パンチョから文化祭準備に誘われた。
「安達もどう?」
「うちの学校文化祭なんてあった?」
「実はね。安達も青春感じに来ない?」
喧噪に包まれながら少し思う。私はあまり人間が好きじゃないのかもしれない。しまむらだけが特別枠で、そこから宇宙が無限に広がっていく。私たち二人だけの国が欲しい。だから――
「これとは別に、やろう。二人だけの文化祭」
高校三年生、高校最後の夏休みと高校最後の(でも初めての?)文化祭。
なんだかとっても久しぶりな気がする高校生な安達としまむら。ifや大人になってからの回想などなしに、純粋に高校時代の話をするのは8巻以来?(たぶん) そんなに久しぶりなら今までやった記憶のない文化祭が3年になって突然生えてきても仕方がないねw
内容は母の実家に行くしまむら、文化祭の準備、文化祭本番、二人だけの文化祭。めっちゃタイトルが長い1話目からたった四文字の四話目まで、各話のタイトルの文字数と共に登場人物が少なくなって、世界が狭く閉じていくのが特徴。それはしまむらが安達を受け入れているパーセンテージを表すかのよう。
安達の世界を受け入れるしまむら。それは本当に受け入れなのか許容なのか流されているのか諦めなのか悟りなのか。どれも違うような、どの要素も入っているような、微妙で絶妙なニュアンス。
しまむらさんってば安達ちゃんのことちょー好きじゃないですかやだーと思うところと、ちゃんと外に幸せを感じるところを持っていて「安達と」じゃなくても生きていけるんだろうなーと思うところ、その両方の見せられてしまむらはやっぱり普通の子だと思うと同時に、どこかちょっとヤキモキする。はっ! この緩急がしまむらが女の子を落とすテクニックか←
一方、安達はいつも通りの一途さと安定の情緒不安定さ。しまむらの制服エプロンを良さを語る熱量と、観察日記が実在していることにドン引きですわ。
二人が大人になって同棲することになるまでの繋がりというか、(主にしまむらの)心の準備みたいなものが読めた気がする。良かった。
一話目の陶芸家や三話目の歌手や奏者はクロスオーバーだったりするのかな? 最近入間作品をほとんど読まなくなったのでわかりません。
