「全ての色彩を重ね合わせると、白になる。ぼくが目指すのは、全ての種族が共に暮らす『白き国』だ」。
異なる種族同士が争いをつづける葡萄海。頭部に猫耳を持つ「ミーニャ」族が支配するガトランド王国の第二王子トトはある日、人質として送られた人間の少女アルテミシアと出会い、親交を深める。しかし人間とミーニャの間には根深い差別意識があり、ふたりの淡い恋にも残酷な運命が降りかかることに…。
犬村小六が圧倒的筆力で描く超大型ファンタジー群像劇、ここに開幕!!
人族と獣人族が共存する世界。種族同士の争いが絶えない世の中で、猫獣人が覇権を握る葡萄海を舞台にした、種族の壁なく仲良く平和に暮らせる国「白き国」を夢見る若者たちの空戦×青春群像劇。
犬村先生には人の心がないのか!(←著者のXによるとこれは誉め言葉らしい)
よりにもよってこの話を2/22猫の日に読んでしまった心の叫び。
読み終わってから表紙を見ると、人選・色・表情が全て皮肉としか思えないので、編集(と場合によっては絵師)も同じ穴の狢だけどな!
偏見・差別・遺恨に縛られた相容れない異民族の物語。
現状の勝者の為政者は搾取に走り、若者は理想を掲げる。敗者は恨み辛みを重ね、それを晴らす機会を虎視眈々と人生を賭けて狙っている。利己主義で排他的な人間の本質を鮮明に描きつつ、どこか現在の世界情勢も感じられる、シビアな戦争の話だった。要約すると猫耳が酷いことされる話。
ストーリーとしては、初めから胡散臭い奴等が順当に裏切っていくので勝敗や戦況での驚きはないが、エピローグ(五章)になるまで誰が主役がわからない話の造りになっているで、どう話が転がるのかはまるで読めなくて、最後まで目が離せない。まさか彼(彼女)が主役格へと躍り出てくるとは!と思う人物が少なくとも一人は居るはず。
空戦の描写は前作『プロペラオペラ』と似た限られた高度での戦闘で、前作よりも高度が低いこともあってかイメージ的には空戦というより海戦に近い。また、異能が強力でファンタジー色が強いのも特徴。
ここからの逆転は流石に無理では?というところまで追いつめられてしまっているのだが、ここからどう逆転劇を見せてくれるのか、あとどれだけ酷いことされるのか、今後も目が離せない。