いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「新・魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち (6)」佐島勤(電撃文庫)

新・魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち(6) (電撃文庫)

『九校フェス』。九つの魔法科高校による合同文化祭だ。夏休みが明けた第一高校は目前に控えるこのビッグイベントに浮き足立っていた。
だが、九校フェス以外にも茉莉花を悩ませる問題が。生徒会選挙によって新たな生徒会長となったアリサの義兄・十文字勇人が、アリサに新生徒会へ入るように依頼してきたのだ。
生徒会役員と風紀委員の兼任はできないため、風紀委員の茉莉花はアリサと離れ離れになってしまい……。
少女は悩みを抱えたまま、九校フェスが幕を開ける――。


達也の時代にあった『論文コンペ』が諸事情によりなくなり、代わりに出来たのが魔法科高校九校あげての合同文化祭『九校フェス』。
新たに生徒会書記になったアリサと風紀委員の茉莉花は、その九校フェスの準備や本番の見回り等、裏方の仕事にに忙殺される。その裏で達也の暗殺や魔法師の誘拐を画策するロシアンマフィアと、それを阻止すべく暗躍する黒羽家に九島家に他諸々の(一方的な)戦いを描く。

キグナスの乙女たち』の続きというより、7割くらいは黒羽姉弟が主役の『夜の帳に闇は閃く』の続きな内容。
マフィアの下っ端がいっぱい出てくるが、全てアリサたちに害が行く前に阻止されるので、アリサたちにとっては自分たちが主役でないフェスの裏方を無難にこなしただけの話にしかなっていない。おかげで『キグナスの乙女たち』としての盛り上がりは全くない。言い方は悪いが“一緒に風呂に入れとけばいいだろ”という雑な百合感が感じられる。
一方、『夜の帳に闇は閃く』としても盛り上がりはない。
黒羽姉弟が優秀過ぎたのが敵があまりにも弱すぎたのか、ほぼ戦闘になる前に終わってしまう。まあ後者かな。あとは胡散臭い誘酔先輩と九島朱夏が道化になったくらい……かわいそうに。
九校フェスという新たなイベントを作ったのならそれに全力でいいのに。どうして裏社会の話を入れたがるかなあ。
堀越先輩の魔法×VRシステムなんて掘り下げればかなり面白そうだった。あれを上辺の説明だけして終わりにするなんてもったいない。
達也に一条茜に黒羽姉弟と同シリーズ他作品のキャラが次々出てくるスピンオフ作品の醍醐味はあったけど、話としては何がやりたかったのかよくわからない。というのが正直な感想。