いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「神さまのいうとおり」谷瑞恵(幻冬舎文庫)

神さまのいうとおり (幻冬舎文庫 た 61-2)

「会社を辞めて農業をしたい」。父親が突然宣言し、高校生の友梨は曾祖母の暮らす田舎に引っ越すはめに。主夫となった父親や同級生との関係に悩む友梨に曾祖母が教えてくれたのは、絡まってしまった糸をほどくおまじないだった。最初は、疑心暗鬼な友梨だったが……。代々伝わる暮らしの知恵、忘れかけていた大切なことを思い出させてくれる物語。


父の退職、農家への転身を機に、母方の実家のある田舎に引っ越すことになった吉住一家の物語。
会社勤めでなくずっと家にいる父を恥ずかしいと感じてしまう長女・友梨。退職後の夫との関係に悩む母・遼子。姉弟の友達が抱える悩み事。吉住家とその周りの人達の問題ごとが、曾祖母の言う地元の習わしやおまじない、昔ながらの知恵をきっかけにして解決していく。
曾祖母のいうお婆ちゃんの知恵袋的な知識や古くから地元に伝わる風習が話の軸になっているのは間違いないのだけど、それより曾祖母の言葉にちゃんと耳を傾けるこの一家が偉いなと。
そんな迷信は非科学的でバカらしいと一蹴してもおかしくない内容を、ひいおばあちゃんの言うことだからとしっかり聞いて考えてみる、このプロセス出来ることに感心した。特に問題を抱えて気持ちに余裕がない時なら尚更難しいことなのに。
だからこそ彼らの人生が好転していくんだろうな。
聞く耳を持つ素直さと、一度立ち止まって考える心の余裕を持つことの大切さを教えてくれる、そんな一冊。