いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「獄門撫子此処ニ在リ2 赤き太陽の神去団地」伏見七尾(ガガガ文庫)

獄門撫子此処ニ在リ: 赤き太陽の神去団地 (2) (ガガガ文庫 ガふ 6-2)

「神去団地へようこそ――そして、ご愁傷様」ここは神去団地。量産された建物が地を埋め尽くし、赤く奇妙な太陽が支配する。現世と幽世のはざま、閉じ込められた無耶師たちが太陽を巡って日夜争う異形の園――そんな場所で、『獄門家』としての過去も、アマナとの記憶すら失って、撫子は目覚めた。人々の欲望が絡み合うなかで、撫子とアマナはこの異形の地の因縁を断ち、脱出できるか。そして撫子は、忘れてはならなかった約束を、思い出せるのか――うつくしくもおそろしい少女鬼譚、霍乱の第二巻。


“鬼”の少女と“狐”の女性の京都を舞台にした現代怪異アクション第二弾。
とある天狗の一族が作り出したらしい現世と幽世のはざまにある神去団地。そこには数多くの無耶師に一部の一般人まで閉じ込められていた。彼らと同じく閉じ込められてしまった撫子とアマナは、脱出方法を模索しながら戦いに身を投じる。

いくつもの集団(天狗の一族/カルト教団/その他の無耶師たち)が繰り広げている血生臭い闘争に横から突っ込んでいく状況。はざまの世界が作り出す、隣にいる仲間が次の瞬間に居なくなったり、突然敵が突っ込んできたりの“なんでもあり”な場面転換。それらが重なって全く息つく暇を与えてくれない怒涛の展開だった。
そこに廃墟特有の澱んだ団地の空気に、不気味で意味深な張り紙の数々。ジャパニーズホラーな雰囲気が掛け合わされて、独特な世界観が広がっていた。
それでいて、やっていることは最近仲良くなった女の子二人が、一緒に水族館デートに行くまでの紆余曲折というね。
一緒に居る時は軽口をたたき合っているのに、切り離されて一人一人になると、双方初めて友達がどれだけ大事で傷つけたくないか、悶々と悩みだす姿がいじらしくて尊い
ただ、読みやすかった1巻と比べると2巻はとっ散らかっていて読みにくい面も。
多対多の戦闘が多かった所為かアクションは状況が分かりにくく、場面が次々と切り替わる展開はスピーディさと驚きはあるのだが、結局今何しようとしてたんだっけ?と迷子になる。二人の悩みも合流したり離れたりの繰り返しの所為で、ずっと同じことをうじうじと悩んでいるように感じてしまう。全体的な構成は1巻の方が上手かったように思う。
それでも、おどろおどろしい雰囲気と緊張の連続の展開、そして百合。今回も作者の独特な世界を堪能できた。