「“文学少女”と繋がれた愚者(フール)」野村美月(ファミ通文庫)
「ああっ、この本ページが足りないわ!」ある日遠子が図書館から借りてきた本は、切り裂かれ、ページが欠けていた――。
物語を“食べちゃうくらい”深く愛する"文学少女"が、これに黙っているわけもない。「食べ物への冒涜だわ!」と憤る遠子に巻き込まれた挙句、何故か文化祭で劇までやるハメになる心葉と級友の芥川だったが……。
垣間見てしまったクラスメイトの心の闇。追いつめられ募る狂気。過去のあやまちに縛られたまま、身動きできず苦しむ心を、"文学少女"は解き放てるのか――?
過去の名作になぞらえて物語を進めていくこのシリーズも早くも第3弾。
今回は演劇というストレートな形で引用だったけど、題材の物語と出てくるキャラたちの物語とのリンクのさせ方が見事。そしてオチが分かってからすぐに読み返したくなるほどの手紙の使い方と展開の上手さが絶品。
また各キャラの心理描写が丁寧なので感情移入しやすく、どんどん追い詰められていく芥川と心葉の心情がダイレクトに伝わってきて、読んでるこっちが胸が苦しくなってくけど、それだけ入り込みやすいからこそ味わえる遠子先輩のセリフの重さと優しさにグッとくる。そして最後の強烈である意味凶悪な二段オチ。2巻のラストとは種類は違うけど同等のインパクトを持ったラストでまずストーリーに大満足。
その上遠子先輩の魅力がこれでもかと詰まった一冊でもあった。緊張した場面でふっと息をつかせてくれる天然ぽいボケや乙女チックで可愛らしい一面、それに対して心葉や他の後輩達に対する優しさと力強さ。緩急が激しくて翻弄されっぱなしだった。
ああ、次が早く読みたい
内容とはあんまり関係ないけど心葉を見上げるななせの挿絵が可愛すぎるんですけど(*´Д`*)