いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



レインツリーの国

レインツリーの国有川浩(新潮社)
オンライン書店ビーケーワン:レインツリーの国

きっかけは「忘れられない本」。そこから始まったメールの交換。俺はあっという間に、どうしても彼女に会いたいと思うようになっていた。だが、意を決して出したメールの返事はつれないもの。かたくなに会うのを拒む彼女には、そう主張せざるを得ない、ある理由があった――。

障害を持った女性“ひとみ”と健常者の男性“伸”の出逢いを描いた恋愛小説。
びっくりした!自衛隊が出てこなくてw


あぁ いいなぁ これ


まず出逢いがブログで読書感想がきっかけという自分にとって馴染みのあるシチュエーションだったたのがツボ。それにとにかく心理描写が丁寧だったのが良かった。男の伸は知らない人にメールを送る勇気があったり女の人の髪型やファッションに意見できるセンスなど相容れないものがあったけど、女のひとみの方は小さいことで悩んだり卑屈になったりと自分にとって分かりやすい思考回路だったので感情移入しやすかった。そのため自分の言いたいことが上手く相手に伝わらないもどかしさ、メールでは冷静になれるのにリアルではどうしても感情的になってしまう自分への憤り、相手の考え方を知って見えてくる自分の未熟さなどなど、どれもダイレクトに伝わってくる。
また、おもいっきり感情移入できたために当事者でもないのに妙にハラハラする恋愛小説だった。
まずは序盤、図書館内乱を読んでいてひとみがどんな障害を持ているか知っていたので、伸のひとみに対する反応にハラハラ。そして初対面以降のお互いに傷つけ合いながら理解しあう姿がネット上だけという細い繋がりの二人の状態と相まってさらにハラハラ。そんな切なく痛い内容でも最後はあま〜く仕上げてくれるのはらしいというか流石というか。お互いに言いたいことを言い合う姿はこの作者の「海の底」と「クジラの彼」に出てくる夏木と望の二人と少し似てるかな。
中途失聴・難聴という障害を知り考えさせられる小説でもあり、作中の人物と一緒にハラハラドキドキが楽しめる極上の恋愛小説でもある大満足な一冊。


一つ気になることが
4章のメールの中で伸が自分の苗字ばらしちゃってるんですけど(^^; しかもひとみにとってかなり重要なことを含んだ文章の中にあるから気付いてないはずもなく、最期のお互いの本名を教えあうシーンでのあの反応はおかしいよなぁ・・・