いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



新釈 走れメロス 他四篇

〈新釈〉走れメロス 他四篇森見登美彦祥伝社
新釈 走れメロス 他四篇

あの名作が、京の都に甦る!?
暴走する恋と友情――
若き文士・森見登美彦近代文学リミックス集!


その時、彼の腕を通りすがりの女性が必死で掴み、「ちょっとすいません!」と叫んだ。思わず見返した相手は驚くほどに可憐な乙女であり、目に涙を溜めている。芽野は決して女性に腕を掴まれたぐらいでのぼせ上がるような人間ではないけれども、理由を聞く前から彼女の涙にもらい泣きしていた。(「走れメロス」より)


異様なテンションで京都の街を突っ走る表題作をはじめ、先達への敬意(リスペクト)が切なさと笑いをさそう、五つの傑作短編。

近代文学の短編ものを考え方をずらしたり逆にしたりしながらリミックス。それぞれの登場人物が少しずつ被っている短編連作のような作品集。


走れメロスが面白すぎる!
夜は短し歩けよ乙女」の第三章の文化祭と同じ舞台で繰り広げられる逃走劇。「夜は短し歩けよ乙女」で出てきた登場人物の影がちらちらと見えるが何となく嬉しくほくそ笑み、内容のあまりの馬鹿馬鹿しさに笑わされ、終始笑いが止まらない。
他も原作を読んだことあるのが「藪の中」と「走れメロス」だったけれど、どの作品にもいい意味での馬鹿らしさというか遊びがあり、この作者独特の言い回しも健在で原作を知らなくても楽しめた。