いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



麗しのシャーロットに捧ぐ―ヴァーテックテイルズ (富士見ミステリー文庫)

「麗しのシャーロットに捧ぐ―ヴァーテックテイルズ」尾関修一富士見ミステリー文庫
麗しのシャーロットに捧ぐ―ヴァーテックテイルズ

「決してこの扉を開けては駄目よ」
先輩からの忠告が頭に浮かぶ。
メイドの仕事を始めてから5年。シャーロットは主人のフレデリックに対する想いを日増しに募らせていた。彼は人形作家という仕事以上に任侠を偏愛していたが、気にならなかった。
だがフレデリックには愛する妻ミリアムがいた。しかし彼女とは一度も会った事がなく、生活している様子もまったく感じられない。
人形への偏愛……姿を見せない奥方……。
とある疑問を持ったシャーロットは、好奇心とフレデリックへの想いを抑えられず、ミリアムの部屋の扉に手をかけた。それが恐怖の事件への扉とも知らずに――。
一つの屋敷で起こる三つの時代にまたがる愛と憎しみの物語。最後まで読み終えた時、貴方はどこまでも暗く深い悪意の存在に震撼する!

第6回富士見ヤングミステリー大賞佳作受賞作のゴシックホラー。


これが佳作? 改稿してるしにても新人とは思えない完成度の高さなんだけど。相変わらずホラーの楽しみ方がいまいちわからないので、純然なホラーだった第一部は物語の雰囲気はいいけど内容的にはそれ程でもなかった。しかし、ミステリ要素が少し入る第二部から一変。
第二部で語られる第一部のものと思われる物語。しかしその詳細には齟齬がある。その微妙な違いが大きな違和感となり、誰がどこまで本当のことを言っているのか、誰が誰なのかが気になり、一字一句見逃すまいと集中し、いつの間にか物語に引きずり込まれるような感じだった。そして第三部で話が一本に繋がり、その違和感がスッキリに解消された時は爽快感すらあった。とにかくその構成の上手さに脱帽。
雰囲気作りと話の構成が非常に上手いので、今後が楽しみな新人さん


唯一の欠点は文と絵のミスマッチ。山本ケンジ氏の絵がホラーの挿絵としては可愛らしすぎるので、解説にある「この小説は決して夜一人で読まないでください」という程には恐さは感じない。でも、これは編集部の問題だからなぁ