いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



犬はどこだ (創元推理文庫)

「犬はどこだ」米澤穂信創元推理文庫
犬はどこだ (創元推理文庫 M よ 1-4)

何か自営業を始めようと決めたとき、最初に思い浮かべたのはお好み焼き屋だった。しかしお好み焼き屋は支障があって叶わなかった。そこで調査事務所を開いた。この事務所〈紺屋S&R〉が想定している業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。――それなのに開業した途端舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして――いったいこの事件の全体像は? 犬捜し専門(希望)、25歳の私立探偵、最初の事件。


なんという素晴らしい爽快感! オチ以外は・・・。
「ミスリードなんだろうけど、それにしても情報過多だなぁ」とか思いながら読んでいたら 最後にこんなスッキリする答えが用意されているとは。普段ライトノベルのミステリモドキばかり読んでいるのが悪いのかもしれないが、矛盾した行動の理由、情報過多の理由など全てのピースがピッタリとはまったその美しい解法に感動すら覚えた。
また“もどかしさ”の使い方が非常に上手い。
読者は二つの依頼が交わっていく様を見ているのに、〈紺屋S&R〉の二人、紺屋とハンペーはそれぞれ別件だと思っているのでなかなか交わってくれない。双方がお互いにとって有益な情報を持っているだけに、そのもどかしさは尋常じゃない。それが合わさった時のスッキリ感ときれいな謎解きの合わさって、何ともいえない爽快感が味わえる。
と、ミステリ的にはこれ以上ない爽快感だったけど、オチが・・・。後の「ボトルネック」といい「インシテミル」といい、感情的にスッキリしない物議を醸し出しそうな終わり方するの好きだなぁ。
オチは苦めだったけど、久しぶりに「ミステリを読んだ」気がしたし、口調や言い回しなどミステリ抜きにしても面白かったし大満足。