いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「永遠虹路」綾崎隼(メディアワークス文庫)

永遠虹路 (メディアワークス文庫)
永遠虹路 (メディアワークス文庫)

ねえ、七虹。私は親友だけど、やっぱりあんたが何を考えていたのか最後までさっぱり分からなかったよ。悪魔みたいに綺麗で、誰もがうらやむほどの才能に恵まれていて、それなのに、いつだって寂しそうに笑っていたよね。でも、私はそんな不器用なあんたが大好きだった。だから、教えて欲しい。あんたはずっと、誰を愛していたのかな?
これは、永遠を願い続けた舞原七虹の人生を辿る、あまりにも儚く、忘れがたいほどに愛しい、「虹」の青春恋愛ミステリー。


何かが違うと思ったら、「嘘」がないのか。(おまけにサッカーもなかった)
過去二作と同じ群像劇ではあるが、何人かメインがいたこれまでと違い舞原七虹一人が物語の中心にいて、彼女の視点の話がないのが特徴的。七虹の半生が、徐々に時代を遡りながら他人の視点で語られていくという構成になっている。


生い立ちゆえに自信が持てず、どうしようもなく不器用で、傷つくことを恐れるがゆえに傷ついていく。そんな七虹の姿に読んでいるこっちが泣ける。
初めのうちは自分の殻に閉じこもった意固地な女性にしか見えないが、その意味が少しずつ分かってくると印象が一変。彼女の視点は一度もないのに、どう読んでも心の中では泣いているようにしか見えなくなって、物語の構成上姿形は段々と離れていっているはずなのに、脳裏には表紙の泣いている絵しか浮かばなくなった。
そんな涙ばかりで切なさいっぱいのだったから、最後の唯一のうれし涙にはもらい泣き。七虹らしく最後まで踏ん切りが悪くて不器用なやり方だったけど、やっと掴めた幸せに読後感はとても良かった。

途中までは過去二作と少し違った趣に戸惑ったけど、不器用な人達の切なくてもどかしい恋愛模様という基本スタイルはそのままの、素敵な恋の物語だった。
あとがきが完全に死亡フラグなのが気になるが、続編を待ちたい。