いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「花守の竜の叙情詩3」淡路帆希(富士見ファンタジア文庫)

花守の竜の叙情詩3 (富士見ファンタジア文庫)
花守の竜の叙情詩3 (富士見ファンタジア文庫)

「テオバルト。愛しているから、あなたを忘れる」
囚われの王女アマポーラと、王位継承に敗れた王子テオバルト。支配した者とされた者として出会った二人は、長い旅の果てに恋に落ちた。だが運命は、二人が互いを守ろうとする気持ちを弄ぶ。
アマポーラのため、テオバルトは人外のものに。そんなテオバルトを救うために、アマポーラは彼の記憶を捨てた。それでもなお平穏は遠く、アマポーラは命を狙われ続ける。懸命に守ろうとするテオバルトだが、アマポーラはその存在すら拒むのだった……。
たとえ同じ時間を生きられなくても、たとえすべてを忘れてしまっても、君を守る――。宿命の愛と冒険の三部作、ついに完結!!


アマポーラがテオバルトを助けるため、彼の記憶を神に差し出し一切を忘れてしまったところから始まる第3巻。アマポーラとテオバルトだけでなく、主要な登場人物それぞれの視点でこれ以上なく丁寧にゆっくりと物語が描かれる。


わかっていたけど辛かった。
自分の記憶の齟齬に思い悩み弱っていくアマポーラ、助けられないもどかしさと最愛の人に恐怖の目で見られる辛さに苦しむテオバルト。2巻と違って一緒に居るのに2巻よりも離れた距離がどうしようもなく辛い。
それに加えて他の人たちの視点でも、それぞれが誰かのため想って行動しているのに、どれもがすれ違いや平行線を辿っていくのがとても切ない。
でも、一番涙腺を刺激したのは視点が無かったエレン。生い立ちゆえにいい子過ぎてわがままも言わなければ泣くこともないエレンが見せる、ほんのちょっとのわがままや、父と母が他人のように振舞う時に見せる涙が、どうしようもなく切なくて泣けた。
そんな苦しく切ないものの先に待っているのは、それらを振り払ってくれるハッピーエンド。初めからわかっていたとしても、それまでの切なさが大きいから、最後に笑顔で終われることの喜びも大きかった。


泣くつもりで読みました。素直に泣けて、最後に笑えました。こんなに気持ちいいことはない。ストーリーラインはベタ過ぎるほどベタだけど本当に綺麗な物語。出会えてよかったと素直に思える作品。