いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「アンチリテラルの数秘術師」兎月山羊(電撃文庫)

アンチリテラルの数秘術師(アルケニスト) (電撃文庫)
アンチリテラルの数秘術師(アルケニスト) (電撃文庫)

「人はデルタtの狭間に生まれ、そして死んでいく」
 ビルから落ちていく儚い少女。彼女の背中に、一瞬、羽が見えた気がした──それが、“数秘術師(アルケニスト)”羽鷺雪名(うさぎせつな)との出会いだった。
 妹の愛架が突然、何者かに誘拐されてしまう。必死で探す俺の目に、無数の赤い数字が虚空に浮かんで見えた。そして、俺は知ることになる。あらゆる数を書き換えることで奇跡を起こす能力者の雪名は、“確率”を操る怪人との戦いにひとり、身を投じようとしていた。“数”の異能力アクション、開幕!


新人5作の中でタイトル&あらすじで一番に惹かれたこれだったのだけど、期待に違わぬ面白さだった。
基本はオーソドックスな学園異能ものなのだが、理系の人間としては確率や〜〜定数など使われている単語にワクワクする。美少女に数学の薀蓄とか語られるとゾクゾクするよね(はい、変態ですね、サーセン)。個人的にはもっと数学の色を濃くしてくれるとなお嬉しいのだけど、それだと読者層が限られてしまうか(^^;
また、主人公・誠一がいい。
初めのうちは流されているだけでヒロインだけが戦う物語なのかと思いきや、後半彼が本性を現し出すと物語が一気に盛り上がる。自分には大した力は無くても、相手の能力を知った上で綿密に作戦を立て、作品の根底に流れる「あきらめないこと」を訴え続け、どんでん返しを演出する誠一に痺れた。
少々キャラが定まっていない感じのするヒロインや他のキャラの印象が薄いのが残念なところだが、それはキャラが掘り下げられていくであろう次以降に期待ということで。