いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「雨の日のアイリス」松山剛(電撃文庫)

雨の日のアイリス (電撃文庫)
雨の日のアイリス (電撃文庫)

ここにロボットの残骸がある。『彼女』の名は、アイリス。正式登録名称:アイリス・レイン・アンヴレラ。ロボット研究者・アンヴレラ博士の元にいた家政婦ロボットであった。
主人から家族同然に愛され、不自由なく暮らしていたはずの彼女が、何故このような姿になってしまったのか。これは彼女の精神回路(マインド・サーキット)から取り出したデータを再構築した情報──彼女が見、聴き、感じたことの……そして願っていたことの、全てである。
第17回電撃小説大賞4次選考作。心に響く機械仕掛けの物語を、あなたに。


ロボットのアイリスが過酷な運命を辿りながら『生きる』とは何かを考えるハートフルストーリー。
アイリスとリリスとボルコフ。どこかが欠けたロボット達が一つの物語を通じて自分自信や『生きる』という意味を考えたり、必死の逃避行の中で大切なものを見つけたり、生きることに一生懸命な姿が感動を誘う。また、新しいものが来たら捨てられるロボットを通じて、消費社会に対するアンチテーゼを投げかける一面も。


なんて真面目な紹介は置いといて、言いたいことは一つだけ


これは泣ける。
気持ちいいほど思いっきり泣けた。
始めから人の死や絶望など涙のスイッチの多い展開なのだけど、第二章の終わりでアイリスの号泣に貰い泣きしてからは涙腺が決壊。ボルコフのリリスへの言葉も、リリスのアイリスへの言葉も、アイリスの最期でも全部泣いていた気が。
ラストがまた良い。理不尽さへの怒りと哀しみを包み込んでくれる優しい結末でまたジーンと来た。
全く奇をてらうことのない真っ直ぐなストーリーとロボット達の優しさが胸を打つ、涙と一緒に小さなわだかまりを洗い流してくれそうな素敵な物語。良い読書時間でした。