いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「龍ヶ嬢七々々の埋蔵金1」 鳳乃一真(ファミ通文庫)

龍ヶ嬢七々々の埋蔵金1 (ファミ通文庫)
龍ヶ嬢七々々の埋蔵金1 (ファミ通文庫)

「八真重護【やまじゅうご】、島流しの刑に処す」と親父に勘当された俺を待ってたのは、人工学園島の極貧生活と、激安アパートの美少女地縛霊だった! その名も龍ヶ嬢七々々【りゅうがじょうななな】様、生前は天才学生集団GREAT7の中心人物だったが今やネトゲ三昧のニート地縛霊。でもコレ、一応美少女と同棲? 俺、始まった!? 否、始まったのは島中に隠された不可思議な宝物《七々々コレクション》を巡るノー冒険【アドベンチャー】・ノーライフな争奪戦の日々!! 第13回えんため大賞「大賞」受賞の奇想天外トレジャーハント・ロワイヤル!!

園都市で宝探しがコンセプト。えんため大賞8年ぶりの大賞作



流石は大賞、テンポが良い会話とクセのない文章で読みやすいし面白い。
何より惹かれるのがその舞台。科学と魔法とトレジャーハントをごった煮にした世界観に、プリンを食べる美少女地縛霊、名(迷?)探偵とメイド男の娘、怪盗団に変な部活とハイスペックな先輩たちなど濃いキャラたちがひしめく。よくこれだけ詰め込んでカオスになったりダイジェスト版にならなかったなと感心しきり。
そんな舞台で繰り広げられる物語は、前半のキャラ紹介兼コメディはテンポのいい会話が楽しく、後半は頭を使って罠を切り抜けていく宝探しにワクワクする。終盤にはアッと驚くどんでん返しもあって最後まで飽きない。
ただ一つ気になったのは、メインキャラの描写。
まずは主人公のブレ。冒頭であれだけの啖呵を切っていたのに最後がアレでは。第七話がっかり感はかなり強い。それに七々々を助けようとしている動機や発端もよく分からない。
あとはタイトルヒロインの存在意義。ヒロインの座は早々に名探偵に奪われ、設定上ドラえもん的ポディションにも成れそうなのにそういったこともなく早くも空気。学園都市だけにインなんとかさんをリスペクトしちゃったのかなw
設定だけでワクワクさせてくれるような世界観なので、メインキャラの芯がしっかりしていればもっと面白かったと思うのだけど。
三月に早くも2巻が刊行予定。主人公の正体という一発ネタが終わったから次からが本番、真価が問われる2巻になりそう。