いつも月夜に本と酒

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「ビブリア古書堂の事件手帖4 〜栞子さんと二つの顔〜」三上延(メディアワークス文庫)

ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)
ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)

珍しい古書に関係する、特別な相談──謎めいた依頼に、ビブリア古書堂の二人は鎌倉の雪ノ下へ向かう。その古い家には驚くべきものが待っていた。
稀代の探偵、推理小説作家江戸川乱歩の膨大なコレクション。それを譲る代わりに、ある人物が残した精巧な金庫を開けてほしいと持ち主は言う。
金庫の謎には乱歩作品を取り巻く人々の数奇な人生が絡んでいた。そして、迷宮のように深まる謎はあの人物までも引き寄せる。美しき女店主とその母、謎解きは二人の知恵比べの様相を呈してくるのだが──。


4巻は三章で三冊(作家三人)ではなく、一冊まるごと江戸川乱歩
オープニングから震災の話題であれ?っとなったが、その後はそちらに方向には進まずいつも通りに古書とそれにまつわるミステリ。
そして古書薀蓄。乱歩は『少年探偵団』を読んだことあるはずなんだけど、あまり記憶に残ってないなあ。でも栞子さんの説明を読んでいたら初期の頃の短編に狂気が潜む作品が多そうで、そちらの方がそそられた。しかし、相変わらず読書欲を掻き立てるのが上手い語り口である。
ストーリーの方はなんと言っても母・智恵子の登場。もっと引っ張るかと思ったのにあっさり出てきたね。
栞子や他の古書店の方々の話から相当な変人が出てくるとは思っていたが予想以上だった。栞子を圧倒する鋭すぎる洞察力と狂気は、扱っている題材が江戸川乱歩ということもあり「怪盗」という言葉がしっくりくる存在。これは超えるべき壁、ラスボス的存在になりそうだ。
もう一つ目立ったのが五浦の頑張り。
古書以外にはほぼ無関心の栞子と奥手の五浦の進展しない恋愛模様にヤキモキするのがこのシリーズの定番なのだけど、今回の大輔君は押しの一手。慣れない攻めに四苦八苦する様子が妙な可愛いさがあって顔がほころぶ。でも、進展したのかは微妙なラインか。栞子にこちらを向かせることには成功したけど、彼女の目線は違う方向向いてそう。そのすれ違いにやっぱりヤキモキ。最後の一手も事実上スルーで次の巻が始まりそうな予感。
あとがきによると物語は後半に差し掛かったようで。あの母を見ると二人はなんだか一度離れそうな、栞子さんが一度消えそうな気がするなあ。