いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「魔女は世界に嫌われる」小木君人(ガガガ文庫)

魔女は世界に嫌われる (ガガガ文庫)
魔女は世界に嫌われる (ガガガ文庫)

鍛冶職人の父親と幼い妹との3人で暮らす少年ネロの平穏な日々は、国王軍の襲撃により唐突に終わりを告げる。妹を連れて森へと逃げ込んだネロは、とある古城へたどり着く。そこで彼は、病の床に伏した魔女と、その娘・アーシェと出会った……。世界に忌み嫌われる魔女と、ネロとの間で交わされた約束。それは死んだ妹を生き返らせてもらうことを交換条件に、魔女の娘を安全な地へと護送することだった。魔女に恨みを持つ人々や魔獣、さらには魔女を捕まえようとする軍隊までも敵に回し、少年は魔女の娘と、寄る辺なき危険な旅に出る。


また世界が敵なのか。
前作『森の魔獣に花束を』と似た世界観と雰囲気を持つファンタジー
どこか頼りない少年が主人公という点でも共通点が見られるが、今作はヒロインも頼りない。
人間に忌み嫌われる魔女の子であるために、外の世界をしらず母以外とは関わりを持つことなく育ったアーシェと、理不尽な理由で一家処刑という十字架を背負わされた少年・ネロ。
15前後の少年少女には過酷な運命を課せられた二人が、悲しい出来事や無慈悲な暴力に耐えながら、魔女と人間の垣根を越えて手を取り合っていく様子に痛々しい中にも温かさを感じる反面、この先この二人で外の世界へ出ていかなければならないという現実に、それ以上の不安を抱かずにはいられない。
でもこんな暗闇だからこそ、その中で見つけるちょっとした優しさや温もりが輝いていくシリーズになるんだろう。
これは泣ける物語になりそう。続きが楽しみ。