いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「香彩七色 〜香りの秘密に耳を澄まして〜」浅葉なつ(メディアワークス文庫)

香彩七色 ~香りの秘密に耳を澄まして~ (メディアワークス文庫)
香彩七色 ~香りの秘密に耳を澄まして~ (メディアワークス文庫)

犬並みの嗅覚をもちながら今までその能力を美味しいものを食べることにしか使ってこなかった秋山結月。
そんな彼女が大学で出会ったのは、古今東西の香りに精通する香道宗家跡取り・神門千尋(家出中)だった。
人嫌いの千尋に邪険にされつつも、結月は次第に香りの世界に魅了されていく。香水、精油、そして香木……。初めて耳を傾けた香りは、何より饒舌に秘密を語っていた。
人々が香りに託した様々な想いを読み解いていく、ほのかなアロマミステリー!


香りという小説では難しい題材を綺麗に分かりやすく表現した秀作。
割と身近な香水やアロマテラピーから、一般人には未知の世界である香道の薀蓄があったり、その香りを頼りに身近な事件を解決するミステリ風味な一面あったりで、全編香りに彩られている。
実際の香りに対するアプローチは、素人の結月(主人公)直感に基づいた拙いが素朴な感想と、その道のプロの千尋から出る洗練された感想の両方が出てくるので 想像を働かせやすい。そういえば映像を脳内で想像することはよくあるが、香りを想像することはあまりないな。これはちょっと新感覚。
香りにまつわる事件の方は少々強引さが感じられて首を捻るところもあったが、薀蓄には興味を引かれたし、香りを想像しながら本を読むという行為が面白かった。


ただ、この作品単体での話じゃないのだが、
元気ハツラツ女主人公と無愛想美青年の組み合わせは、この数か月で何冊か読んだ記憶が。しかも全部メディアワークス文庫。おかげで色々なシチュエーションで既視感が凄いことに。
最近のメディアワークス文庫は日常ミステリ風に偏りすぎだとは思っていたけど、もしかしてキャラクターの傾向も偏り気味なのか? 全部が全部読んでいるわけでないのではっきりしたことは言えないが。 売れるジャンルをコンスタントに出すのは商売としては正しいとは思うけど……。
メディアワークス文庫のこの手の作品はもっと慎重に選ばなくちゃダメかな。素直に楽しめなくなりそうだ。