いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「時と悪魔と三つの物語」ころみごや(HJ文庫)

時の悪魔と三つの物語 (HJ文庫)
時の悪魔と三つの物語 (HJ文庫)

「わたしね、ラキが帰ってくるまで、絶対に泣かないよ」結婚の約束をして外界に旅立つラキを見送るイルクを待ち受けていたのは過酷な運命と『時の悪魔』だった。悪魔から時を駆けることが出来るという『時の砂』を受け取ったイルクの決断は……。『時の悪魔』によって運命の岐路に立たされた3組の男女が織りなす、「時を超える」新本格ファンタジー

第7回HJ文庫大賞・大賞受賞作



作風、キャラクターが作り出す優しい雰囲気は良かった。かなり好みのタイプ。
但し、ストーリーは悪い意味で新人賞作品。
ある条件を満たすと悪魔からもたらされる『時の砂』で時間遡行が出来る物語なのだけど、
タイムパラドックスの解釈が初めはあったのに終わりの方は有耶無耶になっていたりとか、時系列をわざと入れ替えてあるけどあまり意味をなしていないとか、伏線未回収がかなり多いとか、時間遡行の物語を書くには作り込みが足りていない。
でも、それよりも問題なのが過去に戻ることに対して代償やペナルティが無さ過ぎたこと。
この条件なら悩む以前に過去に戻らないという選択肢が生まれない。悲劇が簡単に消せて苦労も葛藤もなしではドラマチックになるはずもなく、いくらハッピーエンドになっても感動はない。
キャラクター作りは上手いし、そのキャラクターを幸せにしようとする姿勢は嫌いじゃないので、現代劇でもファンタジーでも、もう少しオーソドックスな世界観で書かれたものを読んでみたい。