いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ノーブルチルドレンの追想」綾崎隼(メディアワークス文庫)

ノーブルチルドレンの追想 (メディアワークス文庫)
ノーブルチルドレンの追想 (メディアワークス文庫)

『夏茜』
保健部と演劇部の合同合宿が行われた翡翠島、そこで四人が遭遇したのは<三重の密室事件>で……。
『琴弾麗羅の揺籃』
頓挫した復讐に人生の意味を奪われた麗羅は、虚しい日々の果てに一筋の光を見出すが……。
『桜塚歩夢の罪科』
贖罪の人生を選び取った歩夢の旅路は国境を越え、孤独の果てに小さな花を咲かせて……。
旧家の怨念に翻弄され続けた高貴な子どもたちは今、時を越え、勇敢な大人になる。
現代のロミオとジュリエット、珠玉の短編集。


ノーブルチルドレンシリーズの本当のフィナーレを飾る、本編を補完する短編集。



『ノーブルチルドレンの夏茜』
内容:連休を使った合同合宿と言う名の小旅行。
そういえば初めのうちはこういうノリだったなあとしみじみ。終わり頃の印象とかけ離れていて、随分と昔の話のように思える。
緑葉の猪突猛進調査&推理も懐かしい。彼女の推理のまま解決しかけて「ん?」となったが、やっぱり最後は吐季。これも懐かしい。誰がどう考えても「もめるならその場で開封すればいい」という結論に達するのに、そうならないってことはこういうことだよね。




『琴弾麗羅の揺籃』
内容:大学進学後の緑葉と麗羅の様子が麗羅視点で語られる。
恨む対象が居なくなって心に穴が開いたような麗羅。その感情の理解はし難いが虚無感はなんとなくわかる。……が、このシリーズの登場人物の中ではこの程度の悩みだと小さいと感じてしまう。
しかしここでも、麗羅にとっても緑葉は“太陽”なんだな。この無限のエネルギーとバイタリティはどこから出てくるのか。
……市夏さん;;




『桜塚歩夢の罪科』
内容:国外逃亡した後の歩夢の半生
前の話の麗羅の葛藤もこの話の歩夢の贖罪の人生も胸を締め付ける切ない話ではあったけど、ここまで珍しく泣ける場面がないな、なんて思っていたら、最後の最後で一人の少女がやってくれました。
読者の気持ちの代弁と本人の燃えるような愛情、こんなのを全力で叫ばれたら涙腺を刺激されないはずがない。
吐季と緑葉よりも、歩夢よりも、ルキアの幸せを願う。