いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「猫耳天使と恋するリンゴ」花間燈(MF文庫J)

猫耳天使と恋するリンゴ (MF文庫J)
猫耳天使と恋するリンゴ (MF文庫J)

高校2年生の一樹が食べた林檎は、どんな願いも叶える『天界の林檎』だった。林檎を食べたことで悪魔に命を狙われることになった一樹は、天界から舞い降りた天使・ミントと協力して『林檎の片割れ』を捜索することになる。悪魔の襲撃、天界の林檎に隠された秘密、次々に迫りくる苦難を乗り越えながら、片割れを手に入れるために奔走する一樹。そんな中、幼馴染の雪姫が急に積極的になってしまって……!? 第9回MF文庫Jライトノベル新人賞<佳作>受賞作品。恋するリンゴ達と猫耳天使が織り成すラブコメディ。ふんわりまどろむ極上の果実を召しあがれ。


ちょっと不思議な感覚のラブコメだった。
かなり肌色率が高いのに、作品全体に流れる空気はまったり、もしくはふんわり。なのでエッチな雰囲気にならない。
その要因は何事にも動じないマイペースな主人公・一樹。
突然人外に攻撃されても、口からビームを吐く猫に助けられても大して驚かず、口では純情ぶっていながら平然と幼馴染みを脱がす剛の者。お前、どの口でピュアとか言ってんだw そんな彼の淡々とした語り口の一人称がゆったりとした空気を作り出す。
その空気感の中で映えるのがヒロイン達の可愛らしさ。
寡黙で一樹にベタ惚れな幼馴染み・雪姫は、全身から幸せを発散しているようで頬が緩む。ネコミミ+幼女とその属性からしてあざとさ全開の天使・ミントは容姿に似合わないエキセントリックな発言と、どことなく漂う悲哀が魅力。女の子を可愛く描写するセンスだけなら、現行のMF作品の中でもかなり上位だと思う。
天使の設定諸々や後半の駆け足展開などストーリー面では粗が多いが、キャラクターと独特の雰囲気という感性が大きいウエイトを占める部分は素晴らしく、今後も追いかけてみたい新人さん。
次回作はこの続きか、別の作品か。個人的には雪姫が泣きそうな続きよりも、新しい話が読みたい。