いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「MONSTER DAYS」扇友太(MF文庫J)

MONSTER DAYS (MF文庫J)
MONSTER DAYS (MF文庫J)

【邂逅の日】1200年前のその日、世界に魔物が出現した。それはドラゴンであり、妖狐であり、巨人であった。そして戦いが生まれた。魔王が生まれた。英雄が生まれた。多くの戦い、犠牲、そして時を経て、人間と魔物は何とか共存している。とはいえ、未だ軋轢が絶えない人魔間の平和を維持するため、人魔調停局の新人実働官ライル・アングレーは今日も事件と、上司であるオーロッドの叱責と戦っている。そんな中、相棒の一角獣であるアルミスと社会加入を求める外部魔物集落【竜羽の里】の使者を護衛することに。だが、護衛対象の使者は竜族の姫様、しかも彼女は幼い少女で――!? 第9回新人賞 <最優秀賞> 受賞! 銃と魔法の現代バトル&サスペンス活劇誕生!


人間と魔物が共存する現代風の世界を舞台に、街の平和を守るために主人公とその仲間が奮闘する刑事ドラマ風バトルアクション。
泥臭さに男臭さ、若干ハードボイルドの気も入っている世界観に、少女、美女はいるのに萌え要素皆無の硬派で洋モノ連続ドラマ然とした雰囲気。常にギリギリの手に汗握るバトル。世界観、作風共に『コップクラフト』(ガガガ文庫)に近いイメージ。
……これ本当にMF文庫Jの最優秀賞作品?
どんな感想よりも真っ先にこの言葉が出て来てしまった。なんかすみません。
そんなレーベルのイメージは置いといて、中身は最優秀賞に相応しい内容だった。
まず目に付くのがクセの強い調停局の面々。普段は口喧嘩や無駄口ばかり叩いていたり一部の変態さんの行為で笑わせてくれるが、有事には真剣さと見事なチームワークで頼もしさに変わる。やっぱりオンとオフ、メリハリって大事。
その中でもこの世界では弱い人間の主人公・ライルは随一。弱いものが創意工夫で強者を倒していく姿や、過酷な運命を背負った少女に言葉でも背中でも語る姿は文句なしで格好いい。
難点は読みにくさか。
それでなくても色々とデリケートな問題を山積みにした世界観で政治と民族を絡めた問題を題材にしたために、説明が非常に多く流れが悪いところが多い。しかも、説明のし過ぎで先の展開や黒幕が読みやすいという面も。
それでも、かなりの力作かつ“燃え”の良作であることは間違いない。
どう考えても応募するレーベルを間違えた気しかしないけど、このまま魔改造されないで自らの道を突き進んでください!