いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「つくも神は青春をもてなさんと欲す」慶野由志(スーパーダッシュ文庫)

つくも神は青春をもてなさんと欲す 1 (スーパーダッシュ文庫)
つくも神は青春をもてなさんと欲す (スーパーダッシュ文庫)

物の修理が得意な骨董品屋生まれの高校生・物部惣一は、ある日、クラスメイトの月野原鞘音が「他人に不幸を撒く力」を持ってることを知る。その呪いのような力を持つがために、他人と距離を置き、空虚な表情を浮かべる鞘音を見た惣一は、彼女を救いたいと願う。
そんな時、惣一へ祖父から古い茶釜が届く。その正体は付喪神という道具が精霊と化したものだった。幼い少女の容姿をしたその付喪神に「つくも」と名付けた惣一は、彼女が持つ“お茶で心をもてなす能力”を使い、鞘音を救うべく動き出すが……!?
第12回スーパーダッシュ小説新人賞優秀賞受賞作!

物を大事にする優しい主人公・惣一と、彼の元に祖父から送られてきた茶釜の付喪神・つくもが織りなす、ラブ&コメディ&アクション。
表紙も帯も審査員の先生方のコメントもつくも押しだが、この作品の真のヒロインは不幸少女・月野原鞘音。とある付喪神のせいで周囲に不幸を振りまき他人と触れ合うことの出来なくなった月野原を、惣一が何とかして助けようとするのが話の軸なんだから当然よね。
その鞘音さん、デレるのは早いのだがそこからの破壊力が高い。和風美人の容姿でいじらしい仕草、なのに時々スキンシップ過多、何かと弱気で庇護欲をくすぐる、そのくせ発言内容は意外とお茶目。個人的に久々のヒットヒロイン。
他のキャラクターも良い。一押しのつくもは子犬的可愛さ、精神の強い材木座剛の者のオタク・十日に元気っ子の巫女さん・粋華も明るく楽しいキャラで、コメディとしても面白い。
ただ、問題はアクションの部分。
本当にこの話にバトルは必要だったのか?
中盤までアクション要素皆無で来ていて、しかも二人がちょっといい雰囲気になり始めたところで、突然始まる付喪神たちの襲撃。全く展開についていけずただただ唖然。
結局、決着もつくもの力(戦闘とはかけ離れたもの)で、ここまでして戦う必要性をまるで感じない。つくもの力と魅力を最大限に発揮する方向に話を持っていけなかったんだろうか。
男の子が女の子の笑顔のために頑張る王道ストーリーでキャラクターも良く途中まではかなり楽しんで読んでいただけに、後半がバトルにつぐバトルになってしまったのが残念。