いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ダイス・マカブル 〜definitional random field〜 01.否運の少年」草木野鎖(MF文庫J)

ダイス・マカブル ~definitional random field~ 01. 否運の少年 (MF文庫J)
ダイス・マカブル ~definitional random field~ 01. 否運の少年 (MF文庫J)

「──鬼灯君、呪われてたりしない?」生まれつき「確率を裏切る呪い」を持った高校生・鬼灯灰斗は、ある日転校生の美少女・莉子と出会う。莉子の姉・率によってそれが神の呪い≪神呪≫の一つ「否運」であり、呪いを打ち消すためには千人の人間の呪いを集めなければいけないことを教えられた灰斗は、呪具の一つである≪愚者のダイス≫を使い、確率を支配し、呪いを集めることを決意するのだが――。第9回新人賞受賞! 確率を統べる新感覚ダイス・アクション、堂々開幕! もし俺がロシアンルーレットをやるなら? それなら銃弾を五発入れることにするね。――だってこれは、そういう呪いなんだから。

MF文庫Jライトノベル新人賞佳作受賞作



悪くはない。悪くはないんだが……
設定段階では面白そうなのにあまり生かされていないのが勿体ない。
まずは、主人公が持つ確率を裏切る呪いの実態。
ロシアンルーレットなどの例え話ばかりで、主人公がいかに苦しんできたか、どれほど危険なのか全然分からない。
過去の出来事でもなんでもオープニングからドカンと不幸の実例を上げてくれれば実感できて、物語に入り込めたのに。
それと、呪いを逆手に取った主人公の能力。
自分で条件を決めて確率の低い方の結果を強制的に引き出すという能力で、確率を使った思いっきり理系な説明の異能に「これは!」と思ったのだが。後半、肝心なところになるとその内容が隠されてしまって、何をやったのかわからないまま結果のみが表示される。これでは面白くない。もっと理系な説明でガンガン攻めていってほしかった。
キャラクターの個性もしっかりしていて読みにくさもないだが、色々なところでもう一歩踏み込みが足りないと思わせる惜しい作品だった。