後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール (スーパーダッシュ文庫)
大白日（セリカン）帝国――野球の巡業で身を立てていた白日人が興した国。その皇帝暗殺の野望を胸に秘める少年・海功(カユク)は宮廷に入りこむため、少女に扮して後宮の一員となる。新入り宮女として勤務しはじめた彼が見たものは、帝国中から集められた美少女たちが、野球で皇帝の寵愛を争う熱狂の楽園、すなわちハレムリーグであった。野球少年の海功もハレムリーグに巻き込まれていき――!?
なんだこれ。いや、本当になんだこれ。
洒落で浮かんでしまったタイトルに沿うように設定を足していったらこうなったのか？
後宮・女の園の生活の描写が本気なら野球も真面目。アラブ風の後宮と野球という相容れない二つの要素が見事に書き分けられている。まあ、野球は後半“とんでも”になるが。
それだけでもかなり不思議ワールドだったのに、そこに吸血鬼に宇宙人、魔法を使う獣人まで出てきて、もう何が出て来ても驚かない天外魔境に。それでいて特に違和感を感じさせないのが逆に違和感。
このごった煮設定を一冊の小説にまとめ上げてしまう作者の筆力に感服です。
ただ、世界観の面白さはあっても話として面白いかは別の話で……。
後宮に変装して潜入した男主人公がブレまくりで何をしたいのかよく分からない。
復讐のために潜入したはずなのに、位が上がるチャンスや協力の申し出を拒んだり、遊びに来ているわけではないと言いつつ誘惑に負けて散在する、野球になると他が見えなくなる。……お前何しに来たんだよ。
慣れない後宮での生活や野球を通じて周囲の少女たちとの友情を育んでいく姿は悪くなかったので、目的が違えばもう少し楽しめたかなあ。
