いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「つれづれ、北野坂探偵舎 著者には書けない物語」河野裕(角川文庫)

つれづれ、北野坂探偵舎 著者には書けない物語 (角川文庫)
つれづれ、北野坂探偵舎    著者には書けない物語 (角川文庫)

大学に進学した小暮井ユキが出会ったのは、「ラバーグラス」という演劇サークル所属の大野さんと、シーンごとにバラバラとなった脚本にとり憑いているという幽霊の噂。「その事件、解決しちゃいませんか?」ユキは、サクッと持ちかけるが、駆り出されるのは、もちろんあの2人の“探偵さん”で…。“小説家”と“編集者”のコンビが、幽霊にまつわる謎を、物語を創るように議論しながら解き明かす、異人館の街をやさしく彩る探偵物語


1巻から気になっていたんだけど、、、ウエイトレスのパスティーシュさんは大変素敵な人ですね!
ここの男二人は夢見がちとまではいかなくても、どこかふわふわした空気を醸し出すので、現実的で現金な彼女が出てくるとその対比で笑ってしまう。
さて事件の方は、
大学の演劇サークルで起きた幽霊騒ぎをきっかけに、順番が分からない四つのシーンと未定とされている一つのシーンというバラバラの脚本の謎を解く話。
1巻で驚いた雨坂の納得できるように物語を作っていくという解決法にマッチした事件で、4つのシーンの間にあるいくつかの矛盾からシーンの順番と未定のシーンを紐解いていく手順に感心しきり。犯人探しやトリック当てのような通常のミステリとは毛色の違う謎解きは読み応え十分で、新鮮さもあってとても面白かった。
ただ一つ、作品の雰囲気にそぐわない人物が一人いたのが残念。
河野作品では敵役でも何かの信念があったりどこか影があったりで、憎めないキャラクターばかりだったのだが、今作の鍵谷という大学生はただただ我儘の自分勝手。さほど重要な立ち位置でもなく作者の作品で初めて感じた雑味だった。でも、最後にパスティーシュさんが笑いで締めてくれたから読後感が悪くならなくてよかった。
シリーズとしては、最重要人物ならぬ最重要幽霊のレイニーが登場して、二人が幽霊の事件を追い掛けている理由も少しずつ見えてきて、さらに気になる終わり方わされて、先が楽しみになる要素てんこ盛り。卯月を読むのが楽しみ。