いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「WORLD END ECONOMiCA I」支倉凍砂(電撃文庫)

WORLD END ECONOMiCA (1) (電撃文庫)
WORLD END ECONOMiCA (1) (電撃文庫)

人類のフロンティア、月面都市を埋め尽くす摩天楼で、多くの人々が見果てぬ夢を追いかけている時代――。月生まれ、月育ちの家出少年ハルは、“前人未踏の地に立つこと”を夢見ていた。
そのために必要なのは、圧倒的な資金。少年ハルが足を踏み入れたのは、人類の欲望を呑み込み、時に無慈悲に打ち砕いてきた場所「株式市場」だった。
そんなハルが、月面都市の片隅にある寂れた教会で、黒尽くめの美しき天才少女ハガナと出会ったとき、運命の歯車は動き始める――。
少年の見果てぬ夢を描く金融冒険青春活劇。支倉凍砂シナリオの同人ヴィジュアルノベル完全版が、電撃文庫で登場!!

約800頁の大ボリューム!



ライトノベルで株を扱うなんて冒険過ぎやしませんか?と思ったがなかなかどうして。
主人公・ハルはちょっと好きになれなくて、支倉作品らしい会話、婉曲に愛を語るどこか和歌のような会話劇も影を潜めているが、それを差し引いても面白い。分かりやすく噛み砕かれた金融の仕組みの説明も、そこで駆け引きをするハルの取引のスリルも、ハルとハガナのボーイミーツガールとしても、どこをとってもワクワクした。
…………途中までは。
550ページくらいまでは日曜には読み終わっていたのだけど、第七章の終わりから第八章の冒頭で一気に熱が冷めてしまって、読む気が失せてしまった。
そこでは、少々の成功に群がる大人たちがハイエナに見えて嫌な気分になり、突っぱねないハルに違和感を感じ、そういうのを一番嫌いそうな教会の人間のリサに諌める気配がなかったことで彼女にも幻滅した。それまでは気の良いお姉さんのリサが一番のお気に入りキャラだったのに。
ただの演出だと分かっているし自分でも潔癖すぎるとは思うのだけど、面白いのがこのボリューム!と高揚して読んでいたところに、突然冷や水をかけられた形になったので落差が大きかった。
その後、日を置いて読んだラストにはここまでするか!という驚きはあったものの、主人公が思いっきり凹む終わりでは読後感が良くはなく、最後まで読んでもテンションが上がることはなかった。
途中まで本当に面白かったんだけどなあ。自分でも驚くのテンションの落ち方だった。ヒロイン・ハガナのその後は気になるけど、次を読む気になるかは微妙。