いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「紅 〜歪空の姫〜」片山憲太郎(ダッシュエックス文庫)

紅 ~歪空の姫~ (ダッシュエックス文庫)
紅 ~歪空の姫~ (ダッシュエックス文庫)

晦日を乗り越え、新たな年を迎えた揉め事処理屋の紅真九郎。崩月家で夕乃たちと穏やかな正月を過ごしていたが、そこで、冥理から奇妙な話を持ちかけられる。真九郎との見合いを望む少女が現れたというのだ。
しかも、その少女は裏十三家の筆頭《歪空》の一人娘。断ると崩月家に迷惑が掛かると考えた真九郎は、その見合い話を受けることにする。しかし、二人の出会いは紫にまで影響を及ぼしてしまう……。
それが解決する間もなく、真九郎のもとに新たな仕事の依頼人が訪れる。困難な仕事内容に、真九郎は判断に迷うのだが……。
圧倒的な力を背景にして社会に闇を生み出そうとする敵に、真九郎は戦いを挑む!

「紅」6年ぶりの新刊。6年前のは公式ファンブックにちょろっとエピローグを載せただけなので、実質は6年7か月ぶり。



久しぶりでも面白かった。でも、ちょっと薄かったかな。ページ数もだけど、それよりも「狂気」が。
毎回敵となる裏十三家の人物が常人には理解できない狂気を発揮するのが定番なのだが、今回の新たな裏十三家・歪空魅空は、戦闘力は申し分なかった反面、狂気がそれほど深くなくインパクトに欠けた。
それと、今回は悪宇商会が味方だったのも大きい。
毎度、極限まで追い詰められていく真九郎がどうなってしまうのかというハラハラ感も楽しみの一つなので、強力過ぎるバックはマイナス要因。昨日の敵は今日の味方な少年誌的なノリは嫌いじゃないけど、このシリーズに合っているかは疑問。
と、事件やバトルはあっさりだったが、キャラクターの魅力は全く損なわれていなかった。
特にというかやっぱりというか、紫の可愛さは別格。
お嬢様然とした自信満々な振る舞いから、自信なさげな聞き分けが良すぎる子になるギャップ。怖いお姉さんばかりな中で、一人純粋無垢な存在という希少性。全体の殺伐とした空気も彼女を引き立たせるための道具の一つに思えてくる。
そんな紫の成長を真九郎と共に見守りたいが……
裏十三家も出揃ってきて、真九郎の根管となる事件の真相を知る人物も出て来て、通常ならここから佳境へ!ってなるところなんだろうけど、最後の一文とその下の―おわり―を見る限り次はなさそうだなあ。