いつも月夜に本と酒

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「レトリカ・クロニクル 嘘つき話術士と狐の師匠」森日向(メディアワークス文庫)

レトリカ・クロニクル 嘘つき話術士と狐の師匠 (メディアワークス文庫)
レトリカ・クロニクル 嘘つき話術士と狐の師匠 (メディアワークス文庫)

巧みに言葉を操って、時には商いをし、時には紛争すらも解決する「話術士」。
かつて人間と獣人との戦いに巻き込まれ命を落としかけた青年シン。彼は狐の話術士カズラに助けられ、以来、立派な話術士になるべく彼女と旅を続けていた。そんなある日、二人は旅先の街の商店で狼の部族の若き族長レアと出会う。彼女は部族間の紛争に悩んでおり、シン達はその手助けをすることに決める。だが、その紛争の背後には大きな陰謀が隠されていた!
第21回電撃小説大賞〈銀賞〉受賞作!!


話術士シンとその師匠カズラ(狐)が“詭弁”で殺伐とした世界を生き抜く戦わないファンタジー
話が進むにつれどんどん変化していく主人公・シンの人柄に惹かれる話だった。
初めのうちは「話術士」らしい口先の上手さ、思わず感心する話術のテクニックを次々と発揮して、冷静沈着なクールなイメージ。
ところが、話が進み狼人と熊人の一族の抗争に巻き込まれ、予想外の出来事が頻発すると弱さを露呈。意外にヘタレ?と思いつつも人間味がぐっと増す。
そして後半、人間との全面抗争の危機に陥ると、今度は熱血で無謀な面が出てくる。
戦えないのに戦場の真っただ中に立つ姿に手に汗握り、前半と打って変わって情に訴える交渉術は心に響く。でもこのラスト。結局健気な幼女が最強って結論か?w
主人公が完璧とはほど遠かったおかげで感情移入ができ、戦わないのに戦うファンタジーよりよっぽど緊張感が強くて面白かった。言葉の上手さよりも人の心を大事にする内容だったのも好印象。