いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン VII」宇野朴人(電撃文庫)

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (7) (電撃文庫)
ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (7) (電撃文庫)

軍事クーデターによって、カトヴァーナ帝国内はイグセム派、レミオン派、旭日連隊の三つの勢力に分裂する。
旭日連隊のイクタは、行方不明だった帝国皇帝の身柄を確保することに、いち早く成功するが、佞臣トリスナイの巧みな謀略に踊らされてしまう……。
イグゼム派の将校として捜索隊を率いていたヤトリと、戦場で対峙するという、まさかの事態を迎えるのだった――。
非情な運命は、二人の未来をどう変えることになるのか?
話題沸騰の本格ファンタジー戦記、ついに最大のヤマ場を迎える!!

二度の戦術的撤退を挿んで何とか読み切った。しんどかった。
このシリーズの容赦のなさから言って誰が死んでもおかしくない、と言うより五人の中で誰かが死にそうな空気を大分初期の頃から出していた。でもまさか、その対象が最強の彼女になるのは予想できなかった。
思い出話から始まるというあからさまな死亡フラグから一度も手を緩めることなく、眩しい思い出話と非情な現実の対比でゴリゴリと精神を削っていく。しかも、少年少女時代の厳しくも楽しかった思い出や、学生時代の如何に二人の結び付きが強いのかを見せつけられて、現在のシーンの悲壮感は増すばかり。そして、行き付いた先のヤトリの台詞に……。
イクタとヤトリを巡る物語は涙なくしては読めない辛いながらもいい話だったのだけど、二人の最初で最後の決戦が完全な泥仕合なのが納得できない。
自分を殺したヤトリは兵を捨て駒にするただの畜生で、対するイクタは大した策もない木偶の坊。これまでの死線を潜り抜けてきた二人は、思い出の中で学んでいたことはどこ行った……。
そもそもこの巻はイクタらしさが欠片もない。
飄々とした態度も、キレる頭も一さ見せてくれなかった。トリスナイの掌の上でおどり続けて一矢報いることすら出来なかったのも、中断した原因。なにせ読んでいて気分が晴れるところが一切ないんだもの。
“ヤトリシノ”を二度も殺しておいて、戦記の部分が盛り上がらなかったのは正直がっかりだ。
次から新章だが、お通夜ムード以外でスタートできるのか今から心配。


あまり言いたくないけど、あまりにも酷いから白字で言う。
挿絵はせめてマンガ版の人にしてください。
10歳前の子供時代と20前の現代の描き分けすら出来ない挿絵は要らない。ラストシーン台無し。