いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「我がヒーローのための絶対悪2」大泉貴(ガガガ文庫)

我がヒーローのための絶対悪(アルケマルス) 2 (ガガガ文庫)
我がヒーローのための絶対悪 2 (ガガガ文庫)

正義のヒーロー・ガイムーンの勝利に終わった、あの正義と悪の闘争から二週間。月杜市は平穏を取り戻しつつあった。だが戦いに破れようと、その命が果てるまで悪の総帥・二代目ヘルヴェノム卿である武尊はガイムーン打倒を諦めることはありえない。どれだけ自身が傷つこうと、月杜市のすべてを巻き込み絶対悪であることを渇望し続ける。ガイムーンとして生きる宿命を背負った最愛の少女・ミアを正義の呪縛から解き放つために――。
青春ヒーローピカレスクロマン、新たな波紋を生む第二巻!

願いは「一緒に居たい」ただそれだけの幼馴染みの二人に、一体どこまで過酷な試練を与えるのか。
次々と明るみになる裏事情に目が離せない。
ヒーロー側の【財団】がミア=ガイムーンを実験動物としか見ていないという事実が発覚。その一方で悪の組織・リヴァイアサンでは武尊=二代目ヘルヴェノム卿を認めたくない旧リヴァイアサンメンバーによる宣戦布告。1巻のラストで武尊とミアがしたそれぞれの覚悟を踏みにじるかのように、武尊の行く道に積み重なっていく苦難に焦燥感と悲壮感が増すばかり。まったく、それでなくても修羅の道だというのに、武尊はあと何回死に掛ければいいんだ?
そんな状態なのに、二人のやり方はあまりにも不器用。相手を想う気持ちと自分が何とかしなければという想いばかりが強すぎて空回りばかりで、こちらでも焦燥感ともどかしさが募っていく。
そんな中で今回唯一の救いが、学校の先輩にして現リヴァイアサンメンバーの花音。
数少ない二人の事情を知る彼女は、上司である武尊が自ら殺そうとしている心を繋ぎ止め、敵であるミアと友達になって時に叱咤し時に本音を吐露させ、今にも壊れそうなミアの心を守る。その優しさと必死さで胸が締め付けられるくらい素晴らしいお姉さん役だった。
と、キャラクターの心情面ばかり語ってきたが、バトルシーンがまた良い。
タイミングのいい救出劇やピンチからの逆転の連続と王道の展開だが、それを綺麗に魅せる丁寧な描写と、語られる意地や信念のぶつかり合いに手に汗握ること間違いなし。挿絵も実に効果的。
今回もバトルは熱く想いは切なく、とても面白かった。なんとしても作者が思い描くラストシーンまで続いて欲しい。