いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「とある飛空士への誓約9」犬村小六(ガガガ文庫)

とある飛空士への誓約 (9) (ガガガ文庫)
とある飛空士への誓約 9 (ガガガ文庫)

二千年来の悲願であった「天地領有」のために動き出すウラノス。一千隻を越えるウラノス飛空艦隊が西進を開始したなら多島海は滅亡するしかない。世界の命運をかけ、多島海連合軍首席参謀バルタザールは史上最大の奇襲作戦を立案する。片道切符の作戦に参加した清顕とイリアは、仲間たちとともに王都プレアデスを目指すが……。「神さまの造ったこの星が太陽に呑まれ爆発して文明も人類も永劫に消滅してもなお、きみとともにいたい」。空にあこがれた少年少女が織りなす恋と空戦の物語――「飛空士」シリーズついに完結。

シリーズ全17巻。感動感涙のグランド・フィナーレ




ああ、終わってしまった。ずっと読んでいたかった、ずっと浸っていたかったのに。
準備の段階から終戦まで、これまでの沢山のシーンを思い起こさせるような作りになっていた。
バルタと清顕の会話から始まる作戦の立案と遂行には残された4人の想いが詰まっているし、すでに窮地のミオとライナはもっと直接的に仲間を想っての行動をしている。何より一人ずつ丁寧に描かれる理性と本能で葛藤する7人の姿に、『誓約』での思い出がいくつも浮かんできて胸にくるシーンがいくつも出てきた。
迎えた世界の命運を懸けた最後の戦いは、新旧の主人公たちの競演。
彼らの戦いぶりが、戦いの中で掛け合う短い言葉が、過去シリーズまで含めたこれまでの名シーンを思い出させてくれる。個人的なベストシーンは海猫とビーグルの共闘だ。
そしてラストは待ち望んだ大団円。
ここだけを読んだら予定調和だ、ご都合主義だと感じてしまいそうなほど問答無用の大団円でも、これまで16冊分の物語がこのハッピーエンドに説得力をくれる。彼らがどれだけの苦難の道を歩んできたか、読んできたからこそ味わえる幸福感。そうだ彼らは幸せになるべきだ。
感無量です。


一旦落ち着いて考えると、
かぐらはともかくイリアには活躍の場が欲しかったとか、ファナを少しくらい出してくれてもとか、清顕とカルはやっぱりもうちょっと空気読めとか、思うことはいくつかあるけれど、辛い想いばかりしてきた『誓約』の少女たち(主にミオ)が、そしてクレアが笑顔のラストを迎えられたことが嬉しくて、些細なことはどうでもよくなる。
素晴らしい物語をありがとうございました。