いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「君と時計と嘘の塔 第一幕」綾崎隼(講談社タイガ)

君と時計と嘘の塔 第一幕 (講談社タイガ)
君と時計と嘘の塔 第一幕 (講談社タイガ)

大好きな女の子が死んでしまった――という悪夢をみた朝から、すべては始まった。高校の教室に入った綜士は、ある違和感を覚える。唯一の友人がこの世界から消え、その事実に誰ひとり気付いていなかったのだ。綜士の異変を察知したのは、『時計部』なる部活を作り時空の歪みを追いかける先輩・草薙千歳と、破天荒な同級生・鈴鹿雛美。新時代の青春タイムリープ・ミステリ、開幕!


切なくて泣けて最後に幸せを貰える青春恋愛小説を得意とする綾崎隼先生のタイムリープもの。
初めのうちはあまりに暗くじめっとしてどうしようかと。
冒頭で、その後の人生を歪めてしまうほどの小学生時の過ち・最大級の黒歴史で読者の心をえぐった後は、卑屈な主人公による鬱々とした日常描写がしばらく続き、唯一の親友が消えるという大事件が起こっても物語が中々動かない。
その雰囲気が変わるのがタイムリープ現象を自覚する前後に出会う、変人な先輩・千歳と謎の同級生・雛美の登場。
聡明な千歳先輩が状況を整理してくれることでタイムリープものを読んでいる実感がやっと湧いて面白くなりはじめ、もう一人のタイムリープ経験者・雛美が虚実入り混じった発言で引っ掻き回してくれることで、物語が複雑になっていく。自分からは動き出しそうな主人公ではないので、今後もこの二人が対決(敵対しているわけではないが)が中心になりそう。
過去の綾崎作品の中で最もハッピーエンドが見えない話だが、それでも切ないながらも嬉し涙で終われる着地点になるのか、それとも『未来線上のアリア』のように綾崎×SFは後味苦めなのか。四部作のようなのでそれを知れるのはまだ先だが、いわゆる衝撃のラストで終わっているのでとりあえず早く続きが読みたい。