いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「おかえりの神様」鈴森丹子(メディアワークス文庫)

おかえりの神様 (メディアワークス文庫)
おかえりの神様 (メディアワークス文庫)

就職を機にひとりぼっちで上京した神谷千尋だが、その心は今にも折れそうだった。些細な不幸が積もり積もって、色々なことが空回り。誰かに相談したくても、今は深夜。周りを見回しても知り合いどころか人っこひとりもいない。
……でも狸ならいた。寂しさのあまり連れ帰ってしまったその狸、なんと人の言葉を喋りだし、おまけに自分は神様だと言い出して……??
『お嬢、いかがした? 何事かとそれがしに聞いて欲しそうな顔でござるな』
こうして一日の出来事を神様に聞かせる日課が誕生した。“なんでも話せる相手がいる”、その温かさをあなたにお届けいたします。

マヨネーズ中毒になる神様と、チョコレート中毒になる神様の話。……嘘じゃないけど本題ではないな、すみません。
恋に悩む大人たちがやけくそ/諦め/ダメ元で思わず神頼みしたら、出てきた神様は狸だったりビーバーだったりそこらにいそうなチャラい兄ちゃんだったり、およそ神とは思えない存在で……という物語。
彼らは神様らしく助けてくれることはもちろん、ありがたい神託をくれることもない。してくれるの一緒に居て愚痴を聞いてくれることだけ。一応、責任感のない軽い助言くらいはしてくれるけど。
でも、その話を聞いてくれる人や感情の捌け口が一つ有ることが如何に貴重で助かる存在か、現代人ならば大なり小なり感じているはず。それを実践してくれる、とぼけた神様たちの様子に何だか無性にホッとする。
そして何よりこの話、とても甘い。ベタ甘ラブストーリーである。
一話目のほわほわして地に足の着いてない感じの女性・神谷さんに始まり、素直すぎる乙女男子に、小学生の思い出を未だに引きずる三十路の男女と、登場人物の顔ぶれを見て大人の恋かと言われると首を傾げるしかないが、人間恋をしたら大人も子供も関係ない。そして上手くいく恋愛模様はいつだって良いものだ。
失敗や挫折を努力で覆していく話の方が登場人物に感情移入出来たり心に響いたりするけれど、たまにはなんとなくで上手くいく話も良いよね。何せこれは神様が出てくる話だし。
甘味+温かい話で実に自分好みだった。